せっかくみんなで「思い」を共有し、協力してやっていこうとしているのに、なにかと言い訳をして、協力を拒む人もいます。例えばわたしの周りにも、地域活動に協力的ではない方がいます。参加できない理由を聞いてみると、
「仕事が忙しい」「子供のクラブ活動の送り迎えが忙しい」
と言い訳をして、一向に地域活動に出てくる気配がありません。周りの人も「あいつは、いつもそうなんだよ」「協調性がないよね」とあきれ顔です。
こういうことが続くと、
「Aさん、あなたは地域活動にちゃんと出席すべきですよ」
「みんなだって仕事もあるし、大変なのは、あなただけじゃないんですよ」
など、イヤミのひと言もいいたくなりますが、こんなプレッシャーをかけるような言い方をしたら、「しかたないだろ、本当に忙しいんだから」と余計に反感を買い、さらに出てこなくなるのは容易に想像できます。
こういうときは、Aさんが地域活動を断る「理由」に着目してみましょう。そして、その「理由」から、相手の「肯定的な面」を考えてみるんです。
例えば「仕事が忙しい」を肯定的に考えると、「仕事熱心」と言い換えられそうです。「子供のクラブ活動の送り迎えが忙しい」を肯定的に考えると、「家族思い」と見ることもできそうです。
こうして「肯定的な面から考えた理由」を見つけたら、その角度から相手の心に訴えてみましょう。例えば「家族思い」という角度から、地域活動への参加を訴えるには、
「Aさんは家族思いなんだね。地域活動で活躍するお父さんの背中を見せたら、きっと子供も喜ぶだろうね」
という具合です。
拒否の言葉に隠された相手の肯定的な面を探すと、相手が大切に思っていることが見えてきます。相手が大切に思っていることにからめて協力を仰げば、一方的にプレッシャーをかけるよりも、受け入れてくれる可能性が高くなるのです。
実際、いつも断ってばかりのAさんにこの言葉をかけてみました。すると、いつもは見せない、とても嬉しそうな表情を見せてくれました。残念ながらそのときは協力していただくまでには至らなかったのですが、以前よりも確実に、おたがいの心が近くなったのを感じます。こうして「思い」を近づけていけば、そう遠くないうちにAさんが参加してくれる日が来ると信じています。
テイクウェーブ代表。ビジネスコーチ、人財育成コンサルタント。自動車メーカー勤務、ソフトウェア開発エンジニア、同管理職を経て、現職。エンジニア時代に仕事の過大なプレッシャーを受け、仕事や自分の在り方を模索し始める。管理職となり、自分が辛かった経験から「どうしたら、ワクワク働ける職場が作れるのか?」と悩んだ末、コーチングや心理学を学ぶ。ちょっとした会話の工夫によって、周りの仲間が明るくなり、自分自身も変わっていくことを実感。その体験を基に、Webや新聞などで幅広い執筆活動を行っている。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織作りやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。Twitterのアカウントは「@takewave」。
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