机にはペン4本がベスト――選択肢を減らして無駄をなくす机を基地化せよ(1/3 ページ)

仕事の机を整理しようと思った場合、極端に全て捨てることはオススメしません。すべて捨てるわけでも、すべて保管しておくのでもない、その中間にこそ、居心地のよさがあるのではないかと思うのです。

» 2013年03月28日 09時30分 公開
[美崎栄一郎,Business Media 誠]

集中連載「仕事はできるのに、机がぐちゃぐちゃで困ってるきみへ」について

 本連載は2013年2月23日に発売した『仕事はできるのに、机がぐちゃぐちゃで困ってるきみへ』(アスコム刊)から一部抜粋しています。

 多くの「片付け本」や「整理整頓本」にイマイチ感情移入できないのは、職場のリアルな人間関係を無視して「捨てる」という安易なメッセージに終始するためです。

 突然「例の資料出して!」と指示するキマグレ上司。資料を山のように積んで、

隣に侵食するナダレ男。何でも聞いてくる依存系部下。

 気が付けばペンを持っていってしまうコソドロ。本書は、そんな人間関係から身を守り、自分のパフォーマンスを最大限に引き出す「机の秘密基地化」についてお話ししていきます。


 机の基地化は、職場の人間関係を考慮してこそできること。ここでは具体的な人間関係のモデルを設定し、架空の登場人物を使います。舞台は、月光堂株式会社。約3万人の従業員を擁する大手日用品メーカーの本社オフィスです。

登場人物の紹介

(1)三崎:主人公。32歳男性、独身。大学院修士課程を修了後、月光堂に入社。本社での研修を終えたあとは、地方の研究所から地方の工場の品質管理部門に転じ、商品開発と品質管理の最前線で働く。念願かなって本社の開発3課に異動となったが……。

(2)赤松課長(通称・アカハナ):開発3課長で三崎の直属の上司。43歳男性。一応既婚、子持ちらしい。なぜか鼻の頭がいつも赤い。開発の手腕というよりはゴマスリと世渡りのうまさでポストを獲得。ムチャ振りが多く部下からの人望はもう1つ。健康サンダルを愛用。ITリテラシーが低い。

(3)高杉(通称・出木杉):三崎と同期入社で同じく32歳。男性。未婚で修士卒。知識、能力だけでなく仕事ぶりもピカ一で、早くも世間が注目するヒット商品を生み出し、出世街道を猛進中。彼の机が価値を作り出す場所として巧みに設計されていることを知る人は少ない。

(4)大森(通称・ナダレ):36歳男性。開発3課主任。研究者としては独創的との評価がある一方で、机の上を整理する概念がなく、表面は常に見えない。斜めに置かれたキーボードを打てるのが特技。山のように積み重ねた資料や本が隣席を侵食し、ときには雪崩となって襲いかかる。

(5)石川(通称・コソドロ):年齢不詳の男性。40代らしい。主任。マッドサイエンティスト的な雰囲気をまとっている。常に人の机からペンやハサミなどの文房具を失敬するクセがある。

(6)山岡(通称・依存ちゃん):27歳女性、独身。入社3年目。仕事はソコソコこなすが、期待以上の成果を挙げたり自ら新しい課題に取り組んだりする意欲は乏しく、アシスタントから脱皮できない。調べれば済みそうなことをすぐ人に聞く。雑談とコンサバ系ファッションが大好き。残業は大嫌い。

(7)新田(通称・新人):24歳男性、独身。大学院を出て研修を終えたばかりの新入社員。まだ修業中で仕事はなく、アシスタントをしながら勉強中。仕事が少ないので、机はきれい。

(8)中沢課長(通称・ボス):開発2課長。42歳女性、独身。数々のヒットを飛ばすトイレタリー部門のエースで、業界で知らない人間はいない。月光堂初の女性プロパー役員も夢ではないとのうわさ。アカハナと同期。大器かつ美人で男女関係なく慕われているが、私生活は謎に包まれている。


渋滞とは、選択肢がムダに多すぎること

 まず、「渋滞」という言葉を説明しておく必要があります。オフィスでの渋滞というと、仕事が忙しすぎてオーバーフローし、判断のスピードが下がっている状態が思い浮かびます。自分だけでなく誰かに頼んだり、一緒に取り組んだりしている仕事が相手の中で滞ってしまったり、上司が忙しすぎていつまでも許可や決裁が得られなかったりするケースもあります。

 しかし真っ先に解消に取り組むべき渋滞は、自分だけに関するものです。もっと小さくて身近な、個人的な事情で頻繁に発生する渋滞。これを極力避けられれば仕事はたちまち大きく効率化できます。

 個人の中で起きている渋滞の理由を一言で言えば、「選択肢がムダに多すぎること」です。選ぶことに本質的な意味があればいいのですが、大概のケースは仕事の価値を向上させないムダな選択のために、ただ時間を浪費しているだけです。

渋滞を解消せよ!

 整理術や片付けを説く本は、必ず「捨てる」というアクションをすすめています。必要のないものは四の五の考えず、思い切って捨ててしまえというわけです。

 もちろんそれでも悪くはないのですが、捨てるという行動にはそれなりの決断が伴うこともまた事実です。一度捨ててしまったものは戻ってはきません。新たに同等のものを買うためのコストが掛かってしまいますし、会社の資料など、捨ててしまえば回復不可能になってしまうものもあります。

 しかし、捨てなければ必ずスペースが必要になります。会社では1人に与えているスペースに限りがあります。ためっぱなしでは、あっという間に限界がやってきます。

 僕はすべて捨てるわけでも、すべて保管しておくのでもない、その中間にこそ、居心地のよさがあるのではないかと思うのです。それはスペースの面だけでなく、時間的にもです。

 「捨てる」という最終的な決断は取りあえず先送りしつつも、当面必要のないものは目の前から「消す」。そして、いったん消してからしかるべき時間がたったあとであらためて必要かどうかを判断できれば、渋滞を避けながら、ムダな選択肢を減らせます。

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