ノーベル賞学者がiPS細胞を見つけ出した集中力の源泉は?トップ1%だけが実践している集中力メソッド(2/2 ページ)

» 2013年12月04日 11時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]
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「人のやっていないことをやりたい」がイノベーションの源泉

 その後、山中教授は神戸大学医学部を卒業し、国立大阪病院の研修医になります。そこでキャリアの転換が起こります。スーパードクターといわれる名医でも治療できない重症患者や難病患者を見てがくぜんとしたのです。そして医者ではなく研究者だったら新しい治療法や薬を見つけることができるかもしれないと考え、基礎研究の道へキャリアチェンジをはかりました。

 「人のやっていないことをやりたい」

 そう考えた山中氏は、病気の根源とも言うべき遺伝子レベルの研究をやりたいと考えました。しかし、そこからの山中少年の人生は、まさに波乱万丈です。

 当時は国内に遺伝子レベルの研究部門はほとんどありません。また、遺伝子レベルの実験を行う専用のマウスなどを使うプロセスなどもありません。そこで、同分野が進んでいた米国への留学を決意します。あらゆる研究機関へ片っ端から履歴書を送り、なんとか高度先進医療を研究するサンフランシスコのグラッドストーン研究所の研究員の職を得ることができたのです。

 その後も、帰国して米国と国内の研究環境の違いなどに何度も挫折しそうになります。そんな中、なんとか奈良先端科学技術大学院大学の公募に応募し、採用され、iPS細胞の研究に従事することができます。その後は京都大学で研究を続け、今回の快挙に至ったのです。

30年かかるといわれた事件が6年に短縮された秘密

 ちなみにiPS細胞の発見自体は、偶然のなせる技でした既に万能細胞を作るための候補となる初期化遺伝子は24個まで絞られていましたが、その組み合わせを試すのに30年かかるといわれていました。なんせ、24個のうち、どの遺伝子が何個組み合わせされて万能細胞化するか分からなかったのです。

 ところが、新米の助手は遺伝子を1つずつ入れて組合せる実験を始めたころに、あまった遺伝子が「もったいない」との理由で、24の遺伝子すべてを1つに投入して培養したのです。そうしたところ、驚くべきことにES細胞と同じ機能を示すことを発見。その後、1つずつ遺伝子を取り除き、最終的に4つまで絞り込みました。24個の遺伝子の組合せを1つずつすべて試すのではなく、最初にすべてを入れてしまったところがビックリですが、結果的には30年かかるといわれていた実験が、6年でノーベル賞までとってしまったというわけです。

集中力の矛先を町工場のガラクタ時計から細胞時計へ変えた

 物事の仕組みや真実を解き明かしたいという衝動。その衝動に突き動かされた少年は、その矛先を町工場のガラクタから遺伝子に変えたのです。子どものころから「時計」を分解することに明け暮れた少年が、人類の歴史を塗り替える「細胞の時計」の仕組みを解き明かした瞬間でした。

 ちなみにiPS細胞は「人工多機能性幹細胞(induced pluripotent stem cells)」の頭文字を取ったものです。当初、山中教授はES細胞のような2文字にしたかったのですが、ほとんどが既に使われていました。そこで、仕方なく3文字にすることになったのですが、せめて頭の1文字は小文字にしたいと考えて、当時話題だった、アップルの製品名「iPod」「iMac」にならって小文字のiを付けました。少しでもネーミングが普及することを狙ったことですが、こんなところにも従来の研究者にはない「人のやっていないことをやりたい」というこだわりがあるような気がしますね。

連載『トップ1%だけが実践している集中力メソッド』とは

『トップ1%だけが実践している集中力メソッド』 『トップ1%だけが実践している集中力メソッド』(永田豊志・著、かんき出版・刊、ソフトカバー/216頁、本体1470円)

 成功者ばかりを生み出している幼児教育プログラムのエッセンスをヒントに、大人でも、仕事や夢の実現のために集中力を総動員させるための技術についてまとめたものです。集中力がもたらす奇跡を知りたい方は、ぜひ一読ください。

著者紹介:永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。

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