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» 2014年03月06日 11時30分 公開

ボクの不安が「働く力」に変わるとき:中小企業のメンタルヘルス対策に、今、必要なこと (2/2)

[竹内義晴(特定非営利活動法人しごとのみらい),Business Media 誠]
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中小企業のメンタルヘルス対策に、今、必要なこと

 それでは、アンケート結果にもある「専門家に話を聞いてもらう」のはどうでしょうか。

 このような話をすると、産業カウンセラーが常駐している「相談室」や、行政をはじめとして、保健師や医師が行っている「1人で悩まず、まず相談」のような場所をイメージされるでしょう。もちろん、そのような場所は「最後のとりで」としてなくてはならないものですが、「こころの〜」や「メンタル〜」と書かれている場に相談に行くのは、かなりハードルが高いですよね。

 また、私たちが日常の仕事の中で抱える悩みは、保健や医療のことというよりも「職場の人間関係がうまくいかない」「仕事が行き詰まっている」「今月の売上に困っている」などのような「仕事のこと」です。

 このような、「社員が仕事で抱える悩みを、同じ立場を経験したことがある人と気軽に話せる仕組み」があったらいいのでは? と思っています。

 筆者は最近、同じ立場の人と意図的に話をする機会を作っています。経営者なので解決の糸口が見えない悩みを抱えることもありますが、同じ立場だからこそ本音を話せ、分かり合える感覚がうれしい。また、話すことでスッキリでき、言葉にすることで頭の中が整理できます。第三者からの予想外の言葉に解決策が浮かんだり、「あっ、そういうことって大事だな」と助けられたりすることもあります。

 これは、「カウンセリング」のように誰かに話を聞いてもらうわけでもない。かといって、「コーチング」のように積極的に関わってもらうわけでもない。「コンサルティング」のように何かを教わるわけでもない。それらの中間あたりにある「対話」「積極的な雑談」「意図を持った雑談」いうイメージです。話し相手のイメージは、以前ITmediaエンタープライズに寄稿した「なぜ社長はクラブに通うのか」の、クラブのママさんに近いかもしれません。

 このような「社員が仕事で抱える悩みを、同じ立場を経験したことがある人と気軽に話せる仕組み」が社内の制度としてあれば、社員も、管理職も、そして経営者も、それぞれの立場で抱える悩みを言葉にすることでスッキリでき、頭の中を整理し、新たな気持ちで仕事に取り組めるようになるのではないかと思います。

 また、社員1人ひとりのこころの状態がフラットに戻っていけば、職場の空気も変わっていくでしょう。「話すこと」や「対話」の重要性が身体感覚として分かれば、職場のコミュニケーションも自然とよりよくなっていくに違いありません。そうすれば、メンタルヘルスという言葉を使わなくてもよくなるでしょう。

 中小企業は最小限のリソースでがんばっています。1社当たりの負担が少なくて済むように互助会的な形でこのような仕組みがあればいいなと思っています。このような仕組みができないか模索していきます。


 冒頭の自殺対策の講演会の当日、筆者は次のように話し始めました。

 「労働者の自殺やメンタルヘルスが社会問題になっています。みなさんの中にも同僚を失い、悲しい思いをされたご経験がある方もいらっしゃるかもしれません。そこで、自殺やメンタルヘルスの問題を防ぐためにはどうしたらいいか……に意識が向くのは当然のことですね。

 しかし、すでにみなさんもお感じのように、自殺を考えたり、大きなストレスを抱いたりしている人と関わるのはとても怖いです。また、もし、ご自身が関わった同僚が死を選択してしまったとしたら、『あの時、別の関わり方をしていたら……』という十字架を、ずっと背負うことになってしまうかもしれません。

 自殺予防やメンタルヘルス対策はとても大切です。けれども、本当に大切なのは「どうすれば自殺を、メンタル的に病んでしまう人を減らせるか」ではなく、「どうすれば私たちが充実した気持ちで働ける職場を作れるか」なのではないでしょうか。

 仕事の中には、大変なことも、苦しいことも、辛いこともたくさんあります。しかし、職場の雰囲気やコミュニケーションが良くて、何でも話し合えて、仲間と毎日を充実した気持ちで働くことができたら、メンタル的な不調も起きないでしょうし、自殺まで追い込まれることもないでしょう。そして何より、仕事が楽しくなってくるはずです。

 それでは、今から『自殺予防』の前に必要なこと〜ちょっとの工夫が働きやすい職場を作る〜について、お話したいと思います」

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