コラム
» 2014年03月27日 11時00分 公開

サイボウズ式:マンガ『弱虫ペダル』に見る動機付けの重要さ (3/3)

[サイボウズ式]
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チームの目標達成に重要な「役割の獲得」

梅崎: モチベーションには「外発的」なものと「内発的」なものがあると言われています。例えば「人に評価されたい」とか「賞金が欲しい」といったものは「外発的」なモチベーション。一方で「その行為自体が好きで好きでしょうがない(ここでは、自転車に乗って走ること自体が好きでしょうがない)」というのは「内発的」なモチベーションです。

 一般的には、内発的なモチベーションのほうが外発的なものよりも持続率が高いと言われています。主人公が所属するチームにおいては、個々のモチベーションを別の要素が補強しています。それは「役割の獲得」です。

 各高校のそれぞれの選手も個性的ですが、そのチーム全体の雰囲気も明確に色分けされています。とりわけ、主人公が所属する「総北高校自転車部」では、主将である金城はチームとしての結束を重視し、自分が選んだメンバーを深く信頼する人物として描かれています。

 主人公の坂道は、他のメンバーと比べて経験も自信もないまま試合に参加することになるのですが、キャプテンの金城から、上り坂に強い「クライマーとしての役割」を任されることで、窮地に追い詰められた際に常軌を逸した力を発揮します。

 インターハイ初日のレース冒頭。転倒事故に巻き込まれて最下位になるという絶望的な状況に追い込まれた坂道は、チームの中で与えられた自分の「役割」を果たすために、前人未到の「100人抜き」を目指すのです。

梅崎: このエピソードでは他人のために、自分の役割を見つけるという「外的な役割の獲得」によって、主人公が、より「折れにくい」モチベーションを得て潜在能力を発揮する姿が描かれています。

 確かに、金銭や褒賞といった外発的なものに比べて、自己研鑚(けんさん=スキルや能力などを鍛えて磨きをかけること)や自己実現といった内発的なモチベーションはより強いものです。しかし、それが「自分個人」の中で閉じている場合、その持続性や耐久性には限界があるのかもしれません。

 チームワークにおいては、加えて「他人(チーム)のため」という尺度でのモチベーションをうまく作りあげることで、その強度をさらに高めることができるという示唆がここにある気がします。

 作品では、インターハイのロードレースは3日間にわたって行われます。最初の2日間はチーム内での助け合いによって、なるべく良いタイムでメンバー全員が次の日に進むことを目指すのですが、最終日の3日目は「個人戦」となり、レースの様相がガラリと変わるんです。

 各区間で、それぞれの役割を持ったメンバーが限界まで力を出し尽くして、チームのエースを前へ前へと引っ張っていく。役割を終えたメンバーは、残りのメンバーに思いを託して、そこで力尽きるんです。

 ゴールを目指す選手には、リタイアしたメンバーの思いがつぎつぎと積み重なってくる。その悲痛な思いをモチベーションとすることで、また違うスタンスでレースに臨んでいるライバル校に勝てるかどうか――というドラマも、また見どころです。もっとも、この部分は仕事の中で折れないモチベーションをどう作るかというテーマには直結しないのですが。

 2012年のロンドン五輪の男子水泳では、期待されながらも個人種目でメダルに手が届かなかった北島選手に対して、他の選手が「康介さんを手ぶらで日本に帰すわけにはいかない」と奮起し、メドレーリレーでの銀メダル獲得の原動力としたというストーリーも、話題を集め流行語にもなりました。

 各メンバーが自分の役割を明確に認識し、それを果たすことをひたすらに追い求めることが、チームの目標達成において重要な要素かもしれません。

 さまざまな形のチームワークやモチベーションが、スピード感あふれるロードレースという舞台でぶつかり合う『弱虫ペダル』。個性豊かな選手たちが織りなす友情や戦いのドラマに加え、チーム戦のかけひきの妙など、マンガ作品としての見どころも満載です。興味があれば、ぜひ作品を読んでみてはいかがでしょうか。

(執筆:柴田克己)

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