自分をランク付けせず、短所も長所として発信する。自分を本当に理解し、愛してあげられるのは自分だけです。
本連載は、斎藤茂太著、書籍『あせらない練習』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。
休みなしに働いているわりには成果が上がらなかったり、あれもこれもと欲張ってやるわりには何もモノにできなかったり――。周囲に振り回されて自分自身を見失っている人、あなたの周りにもいませんか? そういう人の心の中には、いろいろな情報や思いがグチャグチャとあるだけなのかもしれません。
・頭のなかのあせりは、脳を休ませるとだんだん消えていく
・「その場しのぎ」をやめれば、あせる気持ちから解放される
不安やイライラは、ちょっとした心の練習でなくなります。あせらないで頭と心さえスッキリさせれば、筋道の通った思考と気持ちの整理もきちんとでき、目的別にゆったりと行動することができるようになります。
本書では、どうしてもあせってしまいがちな人の頭と心をスッキリさせる練習方法を、心の名医であるモタ先生の幸せメソッドにならって紹介します。
周囲の雑音に振り回されないようにするためには、まず、等身大の自分を好きになることが大切です。
これができないと、他人と自分を比べて落ち込んだり、周囲の目に自分がどう映るかが気になったりなど、自分を見失ってあせる羽目に陥ります。
昨今は、ともすれば人をランク付けすることが多いように思います。そこで上位になれる人など、ほんの一握り。大半の人が、自分より上のランクにたくさんの人がいることから、ついつい自己否定をしがちです。
そんな彼らに私が言いたいことはただ1つ、
「もっと自分を好きにおなりなさい」
ということです。そのために有効なのが、
「あばたもえくぼ精神」
を持つことです。
あなたも好きな人には「あばたもえくぼ」状態になるでしょう? 多少の欠点があっても、それを美点と捉えて、ますます好きになることが多いのではないですか? それを自分自身に向けるのです。
具体的には、思いつく限り自分のダメなところを洗い出し、それらが長所にもなりうることを確認するだけ。自己否定感の強い人は自分の欠点をあげつらうのが得意なので、そこを利用すれば簡単にできます。
そんなふうに、短所と長所はたいてい「裏返し」であることが多いものです。もちろん、短所が短所であることに変わりはないのですが、この言い換えをすると、
「短所も発揮のしようによっては長所になる」
ことが分かります。その分、自分を欠点だらけと嫌悪する気持ちが軽くなるのです。
そもそも、自分を本当に理解し、長所も短所もひっくるめて愛してあげられるのは自分だけ。わざわざ嫌ってどうするのですか?
自分を好きになること、それがあせらない自分になれる第一歩なのです。
(次回は、「他人の気持ちを想像する」について)
斎藤茂太(さいとう・しげた)
1916(大正5)年に歌人・斎藤茂吉の長男として東京に生まれる。医学博士であり、斎藤病院名誉院長、日本ペンクラブ理事、日本旅行作家協会会長などの役職を歴任。多くの著書を執筆し、「モタさん」の愛称で親しまれる。「心の名医」として悩める人々に勇気を与え続け、そのユーモアあふれる温かいアドバイスには定評があった。2006(平成18)年に90歳で亡くなったが、没後も著作は多くの人々に読み継がれている。
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