Web上でも一人ひとりに応じたおもてなしの心が重要ナレッジワーキング!!

Web上での顧客との関わり方は、より“一人ひとりへのおもてなし”へと変化しています。そのために必要なのは、おもてなしのアルゴリズム化。これは日本人にしかできない作業でしょう。

» 2014年07月02日 13時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 コンピュータの処理能力向上にともない顧客との関わり方が変わりつつあります。リッツ・カールトンのホテルマンやディズニーランドのキャストの振る舞いは、“究極のおもてなし”の見本とされています。

 そして、ネットでのおもてなしがリアルと同じくらい重要になった今日、Webサイトでも利用者がどのような嗜好や期待を持っているのかを先読みして、それ以上のオファーを行わなければなりません。

一人ひとりに最適なコンテンツを

 かつてマーケティングとは、ドーンと広告を出して多くの母数を確保し、それらをふるいにかけて、顧客をゲットするのが一般的でした。広告代理店の役目は、広告を出してくれそうな景気の良い企業を見つけ、テレビや新聞、雑誌といった枠を押さえることでした。

 インターネット広告黎明期はマス広告と同じように枠をおさえて大量露出すればOKでした。しかし、今日のインターネット広告はまったく異なります。例えば、何げなく見ているニュースサイトやブログの広告は、あなた自身の過去のサイト閲覧履歴や商品の購入履歴を判別して、あなたに最適なものを選んで表示しています。私たち一人ひとりに異なる広告が、性別、年齢、嗜好、年収などをキーに配信されているのです。

 複数の配信業者による入札を経て表示する広告が決まるまでの処理時間は0.05秒程度。その仕組みは、およそ広告というよりは株式の取引に近く、リーマンショック後に金融システムのエンジニアが広告業界に流れることによってできあがったそうです。

クレジットカードを使いすぎると、リボ払いを案内される

 一人ひとりに最適なコンテンツを配信するのは、広告だけではありません。Webサイトのナビゲーションなども個人の属性を見ています。

 例えば、クレジットカードの会員サイト。「あ〜、先月は結構使ったな」と思いながらカードの利用履歴をチェックしているときに、「後からリボ払いにすれば、月々の負担が減ります」という案内が出ていたら、思わずリンクをクリックするかもしれません。

 ほかにも、ECサイトではショッピングカート内に3000円分の商品を入れているユーザーに対して「あと2000円買えば、送料無料になります」と表示したり、化粧品サイトではサンプルを受け取っていながら継続注文していない人に「初回オーダーは、20%OFF」といったオファーをしたりしています。

 従来、こうした案内を行うには会員情報に基づいた追加システムが必要でした。そのために数千万円の投資が求められます。しかし、今ではタグを挿入するだけで同じことができるクラウドサービス(参照リンク)も登場しています。

おもてなしのアルゴリズム化

 おもてなしは日本の心です。訪日外国人は年々増加していますが、その多くが日本人のおもてなしや思いやりに感心します。これをネット上でも行うためには、アルゴリズム化が必要になります。

 それは、マインドや気合いといったものではなく、おもてなしや接客というものを集合知から形式知にする瞬間でもあります。日本人は阿吽の呼吸というものを美徳としてきた民族ですが、ここにきてそれらを見える化し、モデルにする必要性が出てきたのです。

 私たち日本人のおもてなしのアルゴリズム化は、日本人にしかできません。顧客の満足度がどのように高まるのか、それはあらゆる業種の企業で最大かつ最重要な研究テーマだと思いますが、顧客ではなく、一人ひとりの「個客」がどのようにサービスや商品を感じるのか、今一度そのメカニズムをひも解くことが求められているのではないでしょうか?

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

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