実際のビジネスの世界では、「問題」が相手から明示されることはありません。場合によっては相手も気付いていない潜在的な問題を自ら「発見」する必要があるのです。顧客の課題を発見し、解決策を提示できる人にビジネスの神は微笑むのです。
何もないように思えるところから課題を発見する力が地頭を決める1つのキーとなります。より多くの顧客の「不」を解消できる人は大きなビジネスチャンスを手に入れます。しかし、試験勉強のように「この問題に答えよ」と言われることはありません。
もう1つのキーは「仮説検証力」です。実際のビジネスの世界では、およそ「正解」というものがありません。1つの問題に対する解法は無数に存在し、また、時間とともに求められる答えも変わっていきます。
昨日ベストだと思われた判断も、明日にはそうでない可能性があります。いつでも通用する絶対的な正解というものがないわけですから、「さまざまな制約条件の下で自分なりに今やれるベストな方法はこれに違いない」と仮説を立て、実行してみて、検証するほかありません。1度でうまくいかなければ、それを何度もやらなければいけません。仮説検証のサイクルは忍耐力を必要とします。
地頭の良さとは、問題を聞くと鮮やかにスピーディに答えを出せることではありません。そんなスマートなものではなく、泥くさい、知的体力を必要とするものです。アスリートたちの地道な日ごろの訓練に近いイメージです。
与えられた業務を的確にスピーディにこなすのであれば「頭の良さ」で十分でしょう。しかし、今の時代は常に新しい価値をもたらす創造性やイノベーションを生み出す力が強く要求される時代です。地頭力を持たないと、自分なりのポジションを築いて、ビジネスを育てていけません。
企業の採用担当者や経営陣もそれが骨身にしみて分かっているからこそ、学歴や過去の成績などに代表される「頭の良さ」ではなく、地道に問題を探して自分なりに試行錯誤できる「地頭の良さ」を求めているのだと思います。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
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