私が副支配人として働いていたディズニーランドのワールドショーケースには、日本、、米国、ノルウェー、カナダ、中国、モロッコなど、11カ国のパビリオンがあり、それぞれの国の文化を発信していました。
例えば、モロッコ館ではモロッコの食べ物や商品が売られ、モロッコのエンターテインメントを体験することができ、接客するのはモロッコ人。ワールドショーケースを歩くだけで、世界旅行を疑似体験できるセクションだったわけです。
ジャパンパビリオンも、ディズニーの徹底的なこだわりが詰まったパビリオンでした。厳島神社の鳥居があり、法隆寺の五重塔がそびえ、偕楽園の庭園とともに、白鷺城が立っている――。そこだけ見れば、フロリダにいるとは信じられない風景です。
しかも、建物はすべて日本の宮大工を呼んで造らせたもの。まさに“リトルジャパン”という空間がしつらえられ、私たちはその中で日本を売っていました。
レストランでは寿司を出し、物販ではブリキのおもちゃや手ぬぐいなどを販売し、太鼓の演奏やお茶会などのイベントを仕掛け、日本流の気遣いでゲストを迎えていたのです。ベースにディズニーの行動基準はあるものの、ジャパンパビリオンに来れば、一度も日本に触れたことのない人でも、リアルな和のおもてなしに接することができました。
副支配人の私の仕事は、現場のレストラン部門、エンターテインメント部門、マーチャンダイジング部門、サービス部門、人材育成部門という5つの部門の統括責任者。約250人の部下とともに、日本流の気遣いを実践していました。
例えば、レストランでゲストをお待たせする場合、ジャパンパビリオンではお子さんが退屈しないように鶴の折り紙を折ってプレゼントしていました。お子さんとご家族はキャストから折り紙の折り方を教わりながら、待ち時間を有意義に過ごすことができるわけです。
そういう気遣いのセンスは、他の国のパビリオンにはないものでした。ディズニーらしいもてなしはするものの、それ以上は追求しない。
その点、日本人は見返りを求めない気遣いを自然と行うことができます。
これがとても評判になって、ディズニー本社、ウォルト・ディズニー・カンパニーのワールドショーケースのサービスをチェックする部門のトップが、ひんぱんにジャパンパビリオンを研究しにやって来ました。
ワールドショーケース内のサービスチェックでは、ずっとジャパンパビリオンが一番でした。私が日本のおもてなしのすばらしさを強く主張できるのは、この裏付けがあるからです。
これは想像で話しているわけではなく、世界一のエンターテインメントを発信するディズニーで、日本のおもてなしが通用することを自分自身が体験してきた。だからこそ、気遣いの力を信じられるのです。
まとめ
「そんなところまで!」という細部へのこだわりが、相手の心をつかみ、飽きさせない気遣いとなっていく。
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