LCD Clockの作り方、教えます:iPhoneアプリビジネス最前線(2/2 ページ)
拡大を続けるiPhoneアプリ市場。連載「iPhoneアプリビジネス最前線」では、世界を相手に戦うiPhoneアプリビジネスの旗手たちに話を聞く。聞き手は、iPhoneアプリ向けの広告配信サービスなどを手がけるノボットの小林清剛社長。
小林 2人のようにデザイナーとプログラマーが一緒に仕事をするメリットは何ですか。
金田 デザイナーはプログラムができないことで、自分のアイデアを実現できずに悩んでいて、プログラマーは満足のいくデザインができないことで、悩んでいるので、それぞれの専門性を生かしていけば、お互い満足のいくモノ作りができると思っています。今後、私たちのように、デザイナーとプログラマーが最初から一緒に1つのアプリを作るという仕事のスタイルは増えていくのではないでしょうか。
小林 デザイナーとプログラマーが一緒に仕事をすることの良いところ、またデザイナーとプログラマーの違いを感じるのは、どのような点でしょうか。
金田 デザイナーとプログラマーの大きな違いは、視点の違いですね。デザイナーは正解のない世界で曖昧なオーダーに合わせて最適解を模索していく作業です。それに対して、プログラマーは全て計算式で成り立っている曖昧な部分のない世界なので、そこをお互い理解して尊重し合うことは、私たちのようにパートナーとして仕事をしていくためには重要ですね。
デザイナーのわがままとプログラマーのわがままが言い合えて、1つのアプリを作れるのはすごくいい環境だと思っています。それには、お互いの専門分野について知らない方がいいこともあります。分業することで、お互いに1人ではできないレベルのものを、遠慮せずに要求できるんです。そこが良いモノを作ることにつながっていると思います。たまに、要求が高すぎて言い合いになりますけど(笑)。
岸川 その時はイラッとすることもありますが、そこはお互い大人なのでケンカにはなりませんね。落ち着いて考えれば、良いモノを作ろうとしたときにその意見が必要な意見だったりするんです。実際良いモノができますし。
小林 仕事を進めるうえで、日々のコミュニケーションは、どのようにしているのですか。
金田 別々の場所で仕事をしているので、仕事でのコミュニケーションはメールが中心です。定例会議のような事はしていません。必要なときに内容のある打ち合わせや会議ができればそれで充分だと思っています。しかし、デザイナーとプログラマーで認識のずれや、仕事の流れの違いなど、さまざまな食い違いがあるので、コミュニケーションは絶対に必要なことだと思います。メールでも仕様書でもしっかりと伝わるように特に気にしています。そうしないとトラブルの原因となるので。
岸川 一見ドライなように見えますが、お互いにiPhoneアプリは大好きなので、メールで仕様について夜中までやり取りしていることはよくあります。現在、別々の場所で仕事をしているのも大事なことで、お互いやりたいときに、やりたい場所で、仕事をすることがパフォーマンスを上げるのに必要なんです。もの作りで良いモノを作ろうとしたときに、時には言いたいことを言い合える環境が必要になるんです。そのおかげで妥協しないモノ作りができます。
小林 パフォーマンスを重視した自由なワークスタイルですね。今後もこのような仕事のスタイルを続けていかれるのですか。
金田 普通の組織なら一体感なども必要なのでしょうが、当社の場合、アプリ開発は1つのプロジェクトで、基本的に1人のデザイナーと1人のプログラマーで行います。現在のところ、組織やチームで1つのアプリを作るこというスタイルではなく、組織としての一体感より、デザイナーとプログラマーの意思疎通がしっかりとできていることが必要不可欠なことです。
小林 今後どのようなお仕事をしたいですか。
金田 現在、オーダーを受ける際も納期重視というよりも、良いモノを作ってというオーダーが多いことから、良いモノを作り続けたいと思っています。そして、目指すのはずっとiPhoneの中に「あり続ける」アプリを作ることです。今後は教育分野や社会貢献が実現できるようなアプリも作っていこうと考えています。
デザインでもなくプログラムでもなく、アイデアが大事だと語ってくれた金田さんと岸川さん。2人のワークスタイルはプログラムのできないデザイナーでも、デザインのできないプログラマーでも、お互い補って作ることで良いモノができるという1つのスタイルを示してくれました。プログラムできない、デザインできない、と日ごろ言い訳しがちな人も参考になるのではないでしょうか。
聞き手 小林清剛(こばやし・きよたか)
1981年東京都生まれ。ノボット代表取締役社長。学生時代から起業し食料品の輸入販売・インターネット通販事業を開始して、コーヒー豆・器具を約3000品販売する日本最大級のコーヒー通販サイトを運営。同時に、人材、教育、エンターテイメントなど十数社の事業立上げに参画。2009年4月に株式会社ノボットを設立して、現在は国内外のスマートフォン用アプリへのアドネットワーク事業、アプリの企画・開発、およびプロモーション事業を展開している。
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