こんな人なら節税できる(前編):個人事業主もサラリーマンも読める「税金の話」(3/3 ページ)
個人事業主もサラリーマンも読める「税金の話」。第2回は主に住民税と節税について考えてみたい。「自分には関係ない」と思っているそこのあなた、損しているかもしれませんよ?
扶養控除を確認
まず、代表的な控除としては(金額は所得税の場合)、
- 基礎控除:38万円
- 配偶者控除:38万円
- 扶養控除(一般扶養親族):38万円
- 扶養控除(特定扶養親族):63万円(16歳以上23歳未満)
などがあるが、いきなり家族を増やすことは難しい。強いて言えば所得が38万円以下の奥さんと結婚するなら、年内に入籍した方がいい。離婚するなら年が明けてからの方がいい。22歳、家事手伝いの娘が結婚するなら「年末は何かと忙しいから、年が明けてから式をあげなさい」と1カ月遅らせると、63万円の控除を受けることができる。当然、娘のダンナとなる人の控除も年内か年始かで異なってくるので、もしダンナとなる人が青年実業家で年収が自分より多かったりすれば、トータルでは年内に籍を入れた方が節税となる。
多少コントロールできるのは出産かもしれない。もしも今「そろそろ子供でも作ろうか」と思っているなら、急いだ方が節税となる。今晩からでも頑張れば年内に出産できる可能性がある。「春になってから」と言っていると、出産は来年となり扶養控除が1年遅れることになる。
16年後のこととなるが、扶養控除(特定扶養親族)の63万円は、12月31日に16歳以上23歳未満が条件なので、年内の子供なら高校1年から控除が受けられるが、早生まれになると年末時点では15歳なので1年遅れることになる。さらに22年後、早生まれの子は22歳で社会人になると、その年の年末は23歳未満だが、所得が38万円を越え扶養控除がもらえなくなり、1年分(1回分)損をする計算だ。
これは半分冗談で書いているわけだが、現実の話をすると、10年、20年後に、扶養控除(特定扶養親族)があるか否かは微妙な状況だ。子供手当の全額支給、半額支給などのニュースもあるし、それもいつまで維持されるか分からない。子供手当を期待して子作りをしても、数年後には廃止になる可能性もある。税制や政策とはそういうものだということは忘れない方がいいだろう。
さて、もう少し現実的なところに話を戻そう。サラリーマンの方で、年末調整後に子供が生まれていたとしよう。「会社に友達が少ないから誰にも話していない」としたら、誰も控除が増えていることを教えてくれないことになる。課税所得が410万円の場合なら、確定申告すれば、所得税で38万円、住民税で33万円控除されるので、7万6000円+3万3000円=10万9000円が戻ってくる。10万円を越えるなら、少し努力して確定申告する気になるだろう。
扶養控除の対象もよく確認する必要がある。扶養控除の対象となるのは
- 配偶者(妻)以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が38万円以下であること
となっている。微妙なのが「生計を一」という部分だ。同居していなくても、田舎の両親に生活費を仕送りしている場合は対象となる。「俺は音楽で食っていく」と東京へ出てはみたが、ほぼフリーター状態のバカ息子に仕送りしている場合も対象となる。逆に同棲中の彼女が無職でも、親族ではないので対象外だ。
田舎の両親も東京へ行ったバカ息子も、年間の合計所得金額が38万円以下という条件はある。アルバイトをしている息子なら、年間の給料が103万円以下なら対象となる。年金をもらっている両親の場合は、65歳以上なら公的年金が158万円以下で対象となる。両親の年金は合算ではなく一人一人の金額だ。年金で注意するのは、所得になるのは公的年金で遺族年金は対象外ということだ。父が亡くなり未亡人となった母が遺族年金をもらっている場合は、158万円を越えていても扶養控除の対象となる。
もし20歳のバカ息子と70歳の両親が扶養控除の対象になると、所得税で63万円+48万円+48万円=159万円、住民税で45万円+38万円+38万円=121万円が控除される。課税所得が410万円の場合なら、確定申告すれば、所得税で23万9000円、住民税で12万1000円、合計36万円もの節税となる。実際にそんなにうまくいく話は少ないと思うが、もし扶養控除の対象になりそうな親族がいる場合はよく確認してみよう。
長くなったので残りは次回に回そう。後編では「医療控除」「住宅ローン減税」「子供手当、高校無償化」などについて考えてみたい。
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