「モテる方法」で考える――フレームワークを自作するコツ:中小企業診断士の思考術
3Cや4Pといった「フレームワーク」は「思考の枠組み」。“抜けもれ”をなくすための「網羅性の確保」に役立ちます。ですが、個々の状況に必ずしも適用できるものではありません。特殊なケースでも使うためには“自作”してみるといいでしょう。
「フレームワーク」(あるいは「フレームワーク思考」)という言葉が、近年注目を集めています。
勝間和代氏の『ビジネス頭を創る7つのフレームワーク力』や永田豊志氏の『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』など、フレームワークを紹介した書籍も多く出版されるようになりました。一昔前には外資系コンサルタントだけの特権と見られていた「3つのC」や「4つのP」も、最近では多くの人が知っています。
フレームワークは「思考の枠組み」などと訳されます。そして、フレームワークを使う目的は(ごく簡単に言えば)「網羅性の確保」にあります。
例えば、自社のビジネスを考える際に、いくら「自社(Company)」と「顧客(Customer)」を熟知していたとしても、もし「競合(Competitor)」の存在を見落としていたら高い確率で失敗してしまいます。そうならないように「3つのC」の観点から検討をしていくわけです。
このように、フレームワークは「視点の見落とし」「抜けもれ」「情報の偏り」などによる失敗を防ぐためのツールであると言えます。上記の書籍の意外にも、フレームワークを紹介したサイトなどもありますので(例えば「N'sspirit投資学研究室」より「経営戦略の基礎を学ぶ」など)、ぜひ1つでも多く身につけてみてください。
フレームワークを覚えたら……
私はコンサルティング会社に勤めていた時、上司から「少なくとも50種類のフレームワークは頭に入れておけ!」と言われました。そして、フレームワークを理解し、使いこなせるようになったら、次に目指してほしいのは「フレームワークを自分で作れる」というレベルです。
私は、フレームワーク思考力は次の3つの段階があると思っています。知識としてフレームワークを知っている段階から、それらが必要な場面を理解して的確に使いこなせるという段階。そして、自分のオリジナルのフレームワークが作れるという段階へ。
フレームワークの種類は数多くあるものの、仕事や人生のすべての場面でフレームワークが用意されているというわけではありません。もし既存のフレームワークが当てはまらないようであれば、自分で作る必要があります。
「マーケティング」を4つのPに分けたように、「経営資源」を「ヒト/モノ/カネ」に分けたように、その「大きなカタマリ」はどんな要素から構成されているのかを考えてみるのです。
モテる方法をフレームワーク化する
例えば「異性からモテる方法」を分類していくとこうなるかも知れません。
これでもフレームワークと言えばフレームワークですが、まだおおざっぱ過ぎるのでもう少し分解してみましょう。
思いつくままに、4つの要素に分類してみました。そして、こういった叩き台をもとに「『年収』や『ステータス』は入らないの?」などとディスカッションを重ねて磨き上げていきます。そして、実際に使ってみて過不足がないかを検証していきます。
分けた結果が「3つのC」や「4つのP」のようにキレイにそろったり、1つの単語になったりすれば最高ですが、無理にそろえる必要はありません。大切なのはできるだけMECE(もれや重複がない)な状態を作ることです。
まとめてみます。
- フレームワークの目的は「網羅性の確保」=見落としや偏りを回避すること
- 既存のフレームワークを使いこなせるようになったら、次は「自分で作れる」レベルを目指す
- 全体がどのような要素から構成されているかを考え、分解する。また、それをディスカッションや実践を通して磨いていく
自分で分解してみて、それを実際に検証してみるというプロセスを繰り返していくことで、この「分解するセンス」は磨かれていきます。そして、そのセンスが身につけば、既存のフレームワークが使えない場面でも自分なりに漏れのないフレームワークをだんだんと考え出すことができるようになってくるはずです。
※この記事は、誠ブログの「Think! Think! Think! 〜中小企業診断士イノウエの思考術〜:「フレームワーク」は作れるようになろう」より転載しています。
誠ブログでは、ブログを執筆してくださるブロガーを募集中です。詳細については、「誠ブログとは?」、「FAQ」をご覧下さい。
関連記事
- なぜ、フレームワークが使えないのか?
「フレームワークはたくさんあるのですが、実際の仕事になかなか使えなくて……」。そんな話をよく聞きます。便利なフレームワークがなぜ使えないのか、少し考察してみましょう。 - その18 浄水器の新製品、どうして売れない?
自動車部品を製造している西沢工房。業績好調な同社では、5億円の研究開発費を投資して浄水器を開発しました。成長分野として期待していたにもかかわらず、全く売れません。なぜ売れなかったのでしょうか。 - その9 さて広告業界の打つ手は?
ある広告代理店は多くのテレビ広告を独占してきました。しかし近年、広告媒体の多様化が急速に進み、テレビ広告にかける予算が縮小。その代理店では今後の対応を考えるために、緊急に経営会議が開かれました。 - モレなく、ダブりなく、問題を整理する 「MECE(ミーシー)」とは?
フレームワークを上手に活用することで、仕事の効率と成果を格段にアップできる――4文字英語の最強フレームワークを5回に渡ってご紹介。初回は「MECE」です。 - 本から知識だけを得ようとしてませんか? 逆転発想の読書術
インターネット時代のビジネスパーソン、最大の価値は柔軟な「思考力」です。思考力をテーマにした書籍も増えてきましたが、相変わらずの前時代的な“知識偏重型読書”に陥ってませんか? - 教える前に絶対欠かせない「概念分析」とは?(前編)
人間の基本的な学習モデルで押さえておきたいのが「アウトプット」。ですが、アウトプットを求めるがあまり、学習者に答えを教えてしまったら元も子もありません。果たしてどのように教えたらいいのでしょうか。