上司が大変そうに見えても、実は部下のほうがもっと大変:未来の人事を見てみよう(3/3 ページ)
プレイング・マネージャー化する現代の管理職。昔の管理職に比べると仕事が増えているように見えます、本当に忙しくなっているのでしょうか。米国の研究結果を元に考えてみたいと思います。
神経科学の観点から見た、ストレス緩和に効く5つの要素
この調査を踏まえて、神経科学(neuroscience)とリーダーシップを研究しているDavid Rock氏は「神経科学の知見がこの状況の打破に寄与するだろう」と述べています(「Being the Boss Isn't So Stressful After All:結局上司になることは何らストレスにならない」)。
現在の神経科学の最新の研究も、この上司のストレスに関する研究を指示するものだそうで、
One of the big ideas that has emerged out of the connection between neuroscience and leadership is that leaders are largely motivated by what we've come to call the SCARF model.
神経科学とリーダーシップとの関連において新たに出てきた重要なアイデアの1つは、我々がSCARF(スカーフ)モデルと読んでいる要素によって、リーダー人材が大きくモチベーションを高められるというものだ。
このSCARFモデルとは、脳に対して大きな危険(threat)もしくは報酬(reward)をもたらす「5つの社会性ある経験のこと」だそうです。先ほど「コントロール性を部下に付与すべき」という話がありましたが、このSCARFの5要素をうまく提供していくことで、部下のストレスを効果的に減らしていくことができるかもしれません。
- Status(地位/ステータス):金銭よりも高い地位に伴う尊敬の念などが幸福感をもたらす
- Certainty(確実性/必然性):長期保証された契約や高い報酬に伴った自信の増加
- Autonomy(自主性/自律性):上記のようなコントロール性による裁量の拡大
- Relatedness(関連性):(筆者注※これは記載なしでした)
- Fairness(公平性):ビジネスで成功しているからこそ感じる公平感
ちょっと今回の話題から見るとこじつけ感もありますが、Autonomyつまり裁量の観点は入ってますね。このモデルの詳細を知りたい方は、こちらのPDF(英語)をどうぞ。
ちなみに冒頭で上司の白髪を気にしていた人は、結局このような結論に至っていました。
This could explain the renegade gray hairs I found on my chin stubble this morning.
この(調査)結果で、今朝無精ひげの中に見つけた反抗的な白髪の理由が分かったよ……。
ストレスを感じていたのは、上司ではなく自分だったんですね……。以前上司の必要性や効用に関する記事を紹介しましたが、それぞれのポジションをうまく機能させる人材マネジメントを、取り入れていきたいところです。
ご一読感謝!
※この記事は、誠ブログの「未来の人事を見てみよう:上司が大変そうに見えても、実は部下のほうがもっと大変」より転載、編集しています。
誠ブログでは、ブログを執筆してくださるブロガーを募集中です。詳細については、「誠ブログとは?」、「FAQ」をご覧下さい。
関連記事
- 自信がない人ほど成功する? “平均以下効果”を考える
評価には、自己評価(認識)と他者評価(認識)があります。その2つは必ずしも一致しないもの。違いを比較し、そのギャップに着目していくと今後の参考になるでしょう。 - ミッションを見つける時――自信も意欲も失った男が決意した日
新連載「30代、V字回復への道」は現状にくじけそうな、もしくはくじけてしまった30代のビジネスパーソンがどうやってV字回復をしていけばいいのかを考える連載です。“V字回復のプロフェッショナル”千代鶴直愛(ちよづる・なおよし)氏の実体験を踏まえた記事をご覧ください。 - 動機のない研修なんてムダだよね
どんな分野であれ上達するためには「上達したいという動機がある」ことが不可欠です。今回と次回は番外編で、何事も分かる範囲で少しずつやる気」を保つのが肝心だという話をしましょう。 - あなたはなぜ仕事に不満なのか
あらゆる組織のあらゆる職位の人々が何らかの苦痛を感じている。家庭でも地域社会でも、つまり社会一般においてである。現代が新しい「知的労働者の時代」となり、その中で本当の充足感を得るためには、どうしたらいいのだろうか。 - みんなが自分で考えるようになる簡単な仕掛け
仕事のメンバーに対して「もっと、自分で考えて動いてくれないかな」と思ったことがある人も多いと思います。今回は「問いかけ」をテーマに、みんなが自分で考えてくれるようになるため方法をお伝えします。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.