攻める総務

「社員の副業」が招くトラブル予防法小遣い程度の稼ぎのつもりが…(2/5 ページ)

» 2015年08月24日 08時45分 公開
[西内孝文企業実務]

事例1:ネットオークションにはまり、本業に支障をきたしてしまったA

 本や生活雑貨など要らなくなった商品をインターネット上のオークションサイトで販売すると、利益を得られることがあります。不要品の販売は所得税も課税されず、一般的に副業というイメージはないかもしれませんが、経験を積んでくると、反復継続して出品を行うようになります。なかには、海外で安く売られている商品を輸入して日本国内で高く販売し、もはや不要品販売の範囲を超えた、商業や貿易業と呼べるくらいの取引もあります。

 Aの場合も、自宅にある不要品をオークションに出品したことがきっかけでした。思わぬ値がついたことから、徐々に副業としての色彩を強めていったのです。とはいえ、勤務時間中に取引をするわけではなく、もっぱら夜中や週末に自宅のPCで行うので、会社はAが副業していることなど知る由もありません。

 ところが、取引量が増えて多忙になると、睡眠不足からAの仕事にミスが増えてきました。心配した会社は、Aと対話を重ねるなかで、ようやく副業の存在を知ることとなったのでした。

管理のポイント

遅刻や早退、欠勤が増えたり、勤務態度に変化がみられる社員がいれば、話をする機会をもつべきでしょう。もしも副業が原因なら、社内規定を示すなど、会社の考えを明確に伝えることも必要です。


事例2:会社の商品を横流しして、ネットオークションで販売していたB

(画像と本文は関係ありません)

 特段不利益がなければ、会社は社員の副業には気付きにくいものです。就業時間中にスマートフォンの画面を頻繁に見たり、席を空けることが多い(トイレに行くフリをする人もいる)など、よほど目につく行動があれば、疑う余地もありそうですが、実際はほとんど表に出てきません。

 しかし、お小遣い程度では飽き足らず、副業に大きな利益を求めて、違法なものを扱ったり、盗品の販売に手を出してしまったら大変です。とくにネットオークションの場合、売り手と買い手が直接やりとりをするため、業者が間に入る場合と比べて商品のチェックが甘くなりがちです。

 Bのケースはまさにそこにつけこんだ犯行で、納品書を偽造して会社の商品を不正に入手し、ネットオークションで販売して個人的な利益を得ていたのです。最初は小さなものから始めたところ、誰も気付かなかったので少しずつ犯行はエスカレート。高額商品がたくさん発注されていることで原価率が異常な数字を示していることに得意先の税理士が気付き、商品の流れを追ったところ、高額商品の納品書だけ、検収担当者のハンコが微妙に違うことから事態が発覚します。検収担当者は押印した記憶がなかったため、取引業者の納品担当者Bを問い詰めたところ、横流しを認めました。

 損害額は累計で2000万円以上。最終的にBの親が分割払いで返済することで和解となり、Bは懲戒解雇で手打ちとなりました。だまされていたとはいえ、架空の仕入を計上していたとみなされた得意先は、修正申告と追加納税を余儀なくされ、怒り心頭です。

 納品書控の印影がいつもと違うことに気付くことができれば、未然に防げた事例ですが、実質的な損害だけでなく、社員と得意先を同時に失ったことは、会社にとって大きな痛手となりました。

管理のポイント

取引内容を毎回チェックするのはコストも手間もかかり、現実的には難しい会社も多いでしょう。しかし、半年か1年に1回は徹底的に調査する(少なくともその姿勢だけでも見せる)ようにしてください。その場合、担当者以外の第三者のチェックが望ましいことは言うまでもありません。


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