募集広告の給与と実際の提示額が違うワケ(2/3 ページ)

» 2015年10月20日 07時52分 公開
[増沢隆太INSIGHT NOW!]
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選考の実際

 ところが、これまで何千件もの採用に携わった経験から申し上げますと、仮に1人採用に100人応募があったとしても、まともに採用社が求めるスペック(要求能力・経験条件)に合致する人は、感覚的に言えば3分の1以下いや、5分1以下ではないかと思います。

 例えば「人材派遣会社コーディネーター募集。経験3年以上。想定年収350〜450万」という求人があるとします。これに対し、某大企業人事職の人とか、中小企業人事部長、営業マンやショップ店員の方、などいろいろな応募が来ます。

 「経験3年以上」と書かれているからには、やはり採用社は人材派遣業の経験者、それも3年以上ある方を想定しています。ベテランがNGかどうかはその求人によっても違いますが、派遣業ではなく、人事をいくら何十年経験されていても、「派遣コーディネーター」募集には、普通はマッチしません。

 一方、こういう募集では、実際未経験の営業マンやショップ店員の方が採用されたりすることは珍しいことでもありません。ただ、「想定年収350〜450万円」とあるのに、提示された年収は300万円だった、というのはこういう時に起こります。あるいはコールセンターSV経験は5年あって、派遣コーディネーターは1年半、などでもあり得ます。

求人スペックに合わないとき

 欲しい求人条件/スペックに満たない方を採用することは珍しい話ではありません。特に経験よりセンスを重視するのは、昨今のコンピテンシー重視の採用プロセスではより顕著になっています。「企業がダマしてる」のではなく、採用基準に満たないが採用するので、想定条件より下がっている、というのが一番多いと言えるでしょう。

 いやいや、「派遣コーディネーター7年やって応募したのに、提示されたのは300万円でしたよ」という方もいるのでしょうか? 絶対ないと言えるほど強くは否定しませんが、その「7年」は、1社でですか? 2社ですか? 15社ですか? 単に長くいただけでは「経歴」とは見なされません。採用条件に、「転職歴3社まで。当社が4社目となるのを上限」など制限している企業もあります。特に伝統企業、大企業ではそういった傾向があり、それらを実際には公開しない企業も少なくありません。

 面接などを通じて採用を検討する過程で、残念ながら欲しいだけの求人スペックを満たしていないと判断されることももちろんあります。求人条件に書かれていることは、最低限の要望であって、単に同業経験や経験年数あるだけで、それが採用企業としては評価できないものであれば、結果としてスペックに満たないと判断されることは十分あります。

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