世界中で毎日8万個 BAKEの「チーズタルト」が売れるようになった理由おいしいだけではない(3/4 ページ)

» 2016年06月14日 08時00分 公開
[伏見学ITmedia]

スイーツ激戦区で大勝負

 時は流れ、それから2年半後――。

 真太郎氏はJR新宿駅構内の商業施設「ルミネエスト」にBAKE CHEESE TARTの1号店を2014年2月にオープンした。これまで北海道でしか買えなかったきのとやのチーズタルトを、それ以外の地域でも販売すべく、新たな専門店を立ち上げたのである。

 「北海道の名産は土産菓子が中心なので、ほとんどの企業は北海道から出ようとしない。けれども、きのとやは生菓子がメインで、土産よりも日常で食べてほしい商品。イメージとしては、会社帰りにお父さんが家族に買っていくようなもの。だから北海道以外でもどんどん売って行こうと思った」(真太郎氏)

 BAKE CHEESE TARTで販売するチーズタルトは、きのとやで提供していたものと基本的には同じで、北海道にあるきのとやの製造工場から毎日店舗に直送される。

 1号店の出店場所については、新宿にこだわりがあったわけではなく、「さまざまな物件を駆けずり回ったがすべて断られ、ルミネだけがOKを出してくれたから」と真太郎氏は苦笑いする。

 スペースも2.7坪と小さいが、文句は言えない。資金もないので特に広告宣伝はしなかったが、最初の1カ月間でいきなり9万個を売り上げた。その要因について真太郎氏は「北海道では毎日数千個売れていたので、チーズタルトの知名度は高かったし、当然味にも自信はあった。また、1種類の商品に絞り込んでいるので、商品陳列もごちゃごちゃせずにすっきりとした店作りができる。それがお菓子屋っぽくなくて、店の前を通る人々の目を引いたのではないか」と振り返る。

BAKE CHEESE TARTの旗艦店である自由が丘店 BAKE CHEESE TARTの旗艦店である自由が丘店

 実際に今でもBAKE CHEESE TARTを訪れる客の多くは、店頭に所狭しと並べられたチーズタルトをスマートフォンなどで撮影して、Instagramなどのソーシャルメディアに投稿するほど。この商品のプレゼン力や店舗全体のデザイン性の高さも同店の特徴と言えよう。

 また、世の中に菓子の専門店は数多いが、1つの商品しか提供しない店は珍しい。これはクロッカンシューザクザクやRINGOといった同社の別ブランドでも同様である。これも顧客にとっては商品が分かりやすいと評判が良いそうだ。

RINGOのアップルパイ。1ブランド1商品が基本 RINGOのアップルパイ。1ブランド1商品が基本

 「北海道以外の地域でもチーズタルトは売れる!」――。新宿での実績を引っ提げて、真太郎氏は勝負に出る。同年11月、新宿店の約10倍に当たる6000万円を投じて、スイーツ激戦区である自由が丘に2店舗目を開業。当初、不動産業者からは3階建てのビルの1階部分だけを貸すという話になっていたが、ここを旗艦店に全国、そして海外へ打って出るのだという強い意志の下、ビルの1棟借りをお願いし、気鋭のデザイナーを起用して菓子ファクトリー(工場)を表現する店を作ったのだ。

 ほとんど宣伝をしなかった新宿店とは逆に、自由が丘店はプロモーションにも力を入れた。ファッション雑誌やテレビなどのメディアで取り上げられ、さらにそうした情報がソーシャルメディアで拡散していった。その結果、オープン当日からしばらくは1〜2時間待ちという長蛇の列ができ続けたのである。

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