JR九州上場から、鉄道の「副業」が強い理由を考える:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)
鉄道と副業というテーマでは、今まで小林一三モデルを語る機会が多かった。しかし、これからは、圧倒的な資本力と「鉄道」ブランドで突き進む「JRモデル」が主流になるだろう。鉄道ブランドを副業に生かすという意味で、そのルーツが紀州鉄道という、小さくて大きな会社にあったという点も話としてはおもしろい。
2015年時点でJR九州の営業収益は鉄道運輸以外の収入が6割を超えている。もはや鉄道のほうが副業かもしれない。そうなると、赤字ばかり作って経営を圧迫する鉄道事業部門は、さらなる赤字圧縮を迫られる恐れもある。国は上場に当たり「路線の適切な維持」を条件としたようだけど、「適切」がきちんと定義されていないため、一定水準以下の閑散路線の足切りは認められるかもしれない。
紀州鉄道とJR九州の違いは、鉄道の規模だけではない。紀州鉄道は非上場、JR九州は上場する。どちらも出資者から利益追求を求められるけれど、上場会社は会社の考え方と株主の考え方が一致しない場合も多い。
企業の活動より配当利回りを重視する株主もいて、利益追求、コスト削減を厳しく求められる。JR九州の副業の強さは心強いけれど、強すぎる副業にとって、鉄道が足かせになりそうだ。JR九州のローカル線に対する施策について、注意深く見守っていきたい。
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