昨季は嫌われていたのに、いかにして「名将」になったのか 広島カープの緒方監督赤坂8丁目発 スポーツ246(1/4 ページ)

» 2016年09月08日 07時11分 公開
[臼北信行ITmedia]
広島東洋カープは25年ぶりにセ・リーグ優勝を果たそうとしている

 悲願のVが目前となった。プロ野球の広島東洋カープが快調に白星を重ね、25年ぶりのセ・リーグ優勝を果たそうとしている。今季は5月22日にリーグ首位に立って以降、一度もその座を明け渡すことなく独走状態をキープ。全国の鯉党の人たちにとっても、待ちに待った歓喜の瞬間はもうすぐそこだ。

 ここまで優勝から遠ざかっていた25年の間、Aクラス入りはわずか5シーズンしかなく、Bクラス止まりだった20シーズンうち屈辱的な最下位に沈んだことも2度あった。長きに渡って暗黒の時代から抜け出せなかったカープが一体なぜ、これほどまでに大きな変貌を遂げたのか。経験豊富なベテランと成長を遂げつつある若手がうまく融合したことは言うまでもないが、実は今季から指揮官に、微妙な変化があった点についても見逃してはいけない。就任2年目の緒方孝市監督のことである。

 正直に言えば、この緒方監督は昨季まで周囲に余り評価されていなかった。特に鯉党の人たちからはかなりウケが悪く、ネット上でも何かと緒方批判が沸き起こっている様子が散見できた。要所の試合をところどころで落とし、采配の面に疑問を投げかけられていたことも叩かれた理由の1つだ。しかしながら、そのベンチワーク以外においても就任1年目の緒方監督は、よくバッシングを浴びせられていた。言い方は悪いが、メディアを通じて発せられる自分のコメントが「独りよがり」で「ぶっきらぼうな性格」がにじみ出てしまっていたのだ。

 昨年のシーズン序盤は試合後、報道陣の取材に応じる際も緒方監督は自分から一方的に話し始めて、質問を一切受け付けずに終わらせてしまうことが多々あった。“独演会方式”を貫けば、記者から手厳しい質問攻めにさいなまれる必要もなく、都合の悪いことを口にせずに済むからだ。

 ただ、さすがにそれで許されるわけがない。一部のネットユーザーの間でも「緒方監督は何でコメントがありきたりでつまらないのか」などと指摘されるようになり、ひいてはメディアからもブーイングが強まり始めたことで、さすがに球団側も指揮官の姿勢を問題視。地元メディアからの強い要望もあって緒方監督はシーズン開幕後しばらくしてから、ようやく質問を受け付けるようになった。

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