村越: この商品の値ごろ感はどのくらいか? それを知るために、たくさんの人にリサーチしているんですよね。例えば、新入社員に「君だったら、この商品はいくらだったら買う?」と聞く。もちろん、競合商品の価格は5万円だから、値ごろ感は3万円くらいかな、という考え方もします。ただ、判断基準はあくまで「主観」なんです。もし、スティッククリーナーが3万円だったら、ここまで売れていたかどうか……。
土肥: 数字で考えて、数字で答えを出す、という流れではないんですね。やれAIだ、やれビッグデータだ、やれIoTだ、と言われている時代の中で、あくまで人間の感覚を重視している。
村越: 大手家電メーカーの場合、たくさんのエンジニアがいて、新しいセンサーなどをつくるケースがありますよね。「このセンサーを使って、新しい商品をつくろう」となるかもしれませんが、当社の場合は違う。「この機能ができたから、新しい商品をつくろう」となったことがないんですよ。もちろん、他社から「この製品を使ってみませんか?」と話をもちかけられ、たまたま掃除機をつくっていて、「これは使えるかも」というケースはあります。ただ、技術優先の考え方はしていないですね。
土肥: 消費者の不満を解消することが、最優先だと?
村越: はい。例えば、1989年に「クリア収納ケース」を発売したのですが、それまで透明な収納ケースってなかったんですよね。世の中に。
当時の収納ケースには色が付いていて、当社の社長・大山健太郎も自宅で色付きの収納ケースを使っていました。ある日、友人と釣りに行くことになったのですが、なかなかセーターが見つからなかったんですよね。家の前に、友人が迎えに来ているのに、部屋中を探してもセーターが見つからない。そのときに「収納ケースの中を見えるようにしたら、探している服が見つかりやすいのでは?」と考え、透明の収納ケースが開発されることになりました。
土肥: ほほー。透明の収納ケースはいまでは当たり前のように存在していますが、そのような経緯があったのですね。
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