井岡一翔を「善戦マン」にしてしまったTBSの罪赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

» 2017年04月27日 12時43分 公開
[臼北信行ITmedia]

試合の中継権を持つTBSの責任

 井岡がWBC世界ミニマム級王者だったころ、ハードパンチャーが相手でもリスクを承知で近距離の打ち合いやカウンターを仕掛けるシーンが何度か見られた。つまり彼は、それができるはずなのだ。しかもずっと「(元世界6階級制覇王者の)オスカー・デ・ラ・ホーヤ(米国=現引退)の戦い方が理想」と公言しているように「超攻撃型」を目指して今も日々練習を積み上げている。それなのになぜ、井岡の戦い方には「エセ・アウトボクシング」のイメージが定着してしまったのだろうか。その理由は、本人や陣営以外のところにも隠されている。

 ハッキリと言う。井岡の試合の中継権を持つTBSの責任も大きいのだ。どういうことかというと、過剰な演出と「“安パイ”の相手ばかりを選んでいる」との疑惑が絶えない井岡陣営のマッチメイクを後押ししているフシがあるのだ。

 それは今回の防衛戦にも現れている。V5を達成した相手のシットプラサートは同級2位で「12年間無敗で61連勝中」という肩書きがあったとはいえ、地元のタイでしか試合をしたことがなく今回が世界初挑戦。いざフタを開けてみても大方の予想通り、実力差は歴然で「なぜ、この選手が世界2位なのか」との疑問が拭えないほどのレベルだった。

 素人ならまだしも普通のボクシングファンなら誰もが分かるような、そういう格下の相手をTBSは試合中継の放送中に「61連勝中の強豪」「最強の難敵」などと持ち上げまくっていた。そしてこれでもかというぐらいの尺の長さで“煽(あお)りV”を流し続けた末、肝心の試合はまるで王者が格下のパートナーを相手に単なるスパーリングを行っているかのような退屈な内容で終わる結果となってしまったのだ。実際に「眠くなってしまうような試合」「弱い相手でもKOできない」といったような井岡を酷評するコメントはネット上でも多数散見されている。

 だが、そういう厳しい意見が飛び交う中でも井岡のV5戦のテレビ中継は好視聴率をマーク。地元の関西地区は瞬間最高で19.2%(平均は15.6%)、関東地区でも瞬間最高18.7%(平均12.9%=いずれもビデオリサーチ社調べ)を記録し、井岡の試合中継がTBSにとってキラーコンテンツとなっていることが改めて証明される形となった。

井岡の試合はキラーコンテンツになっているが……(写真はイメージです)

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