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» 2018年06月20日 09時00分 公開

松屋フーズ、ヤマト、KDDI、第一生命 先進企業に探る「障がい者雇用」の本質もう1つの「働き方改革」を急げ(5/5 ページ)

[中西享,ITmedia]
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「失敗もあるが、それも経験のうち」

 スワンの社長に就任して3年目の松本行雄社長は「『スワン』には一般の人も来店するので、店員の障がい者がサービスでミスをすることもある。しかし、そうした失敗経験を積むことで、障がい者自身が社会性を身に付けることができ、自信を持てるようになる」と指摘。あえて接客させることで、多くの経験を積んでもらっているという。

photo スワンベーカリー店舗の外観

 店には常に店長などの健常者がいて、お客とトラブルにならないよう注意を払っている。障がい者が働く社内カフェの場合、店員である障がい者と客がサービスを巡ってトラブルにならないようにするため、その企業の従業員しか来店しない店舗が多い。「スワン」の場合、開業当初から一般客向けのサービスもしているが、特に問題が起こった事例はないという。20年間のノウハウが生かされているようで、設立時から勤続している障がい者もいるそうだ。今後の店舗展開について松本社長は「競争も厳しくなっているが、より地域に密着し、その地域に貢献できる店を作っていきたい」と話す。

 企業の経営者は、「障がい者だからできないだろう」といった既成概念にとらわれた見方を改めて、新しい仕事にチャレンジできるような職場環境を作ることが求められている。

深刻な人手不足 松屋フーズ「外国人、障がい者は貴重な戦力」

 全国で牛丼店などを展開する松屋フーズは、現在1100店を持ち、毎年50店の勢いで店舗数を増やしている。店舗スタッフの9割がアルバイト。店舗では02年から障がい者を雇用、主に洗浄、清掃、調理補助などを担当してもらい、接客はほとんどしていない。平均月収は12万円程度になるという。勤続年数は平均3年で、5年、10年勤めている障がい者もいる。

 店舗の拡大基調が続いている同社では、ほかの外食産業と同様に、人手不足が深刻化している。遠藤隆也経営企画部長は「障がい者は、スタッフが多くいる売り上げの高い店で雇用することが多い。大人数の方が業務も分担できるし、チームでカバーできるからだ。この厳しい人手不足を埋めるためには、外国人や障がい者の方に活躍してもらわないと店は回っていかない」と語り、障がい者は外国人と並んで貴重な戦力になっている事実を認める。

photo 主婦や学生も含めて多様な人材を戦力化している(松屋フーズの採用情報サイトより)

数を増やすだけでなく、雇用の「質」も見直しを

 今国会では「働き方改革」が安倍晋三政権の主要な政策テーマとなったものの、障がい者の雇用については言及されることがほとんどなかった。しかし、人手不足が常態化した日本の企業では、障がい者も含めた多様な労働力を活用しないと生き残れなくなる恐れが出てきている。

 4月から法定雇用率も引き上げられ、ようやく障がい者雇用の機運も高まりつつある。だが、法定雇用率を達成して雇用の「数」を増やすと同時に、障がい者の仕事の「質」自体にも目を向ける必要があるのではないだろうか。前出の中島教授が指摘するように、企業が働き方自体を見直し、変えていくことによって、障がい者は本業の中でもそれぞれの能力を発揮し、より一層活躍できるようになるだろう。その土壌を整える施策に、企業経営者は真正面から取り組まなければならない。

 それぞれの障がい者が何に向いていて、どの程度の成果が期待できるのかは千差万別で、決して一律ではない。適性を見極めるマネジメント能力こそが生産性向上のために必要であり、企業の力量が問われているのでないだろうか。ヤマトや松屋フーズにみられるように、障がい者一人一人の特性を考慮して能力を最大限に引き出せれば、彼らを「経営上の戦力」に組み込むことができるはずだ。企業は、法定雇用率の達成だけをしていれば良いのではない。

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