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「派遣の2018年問題」まで残り3週間 企業は「期間制限」にどう対応するか?今月末で抜本転換(5/5 ページ)

» 2018年09月10日 08時00分 公開
[高仲幸雄ITmedia]
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派遣元と共通認識を持つ

9.違反時のリスク(効果)を確認する

 派遣期間制限や延長手続きについて違反があった場合のリスクには、労働者派遣法における「勧告」や「企業名公表」の制度があります(同法49条の2第1項、同条2項)。

 もっとも、最大のリスクとして捉えるべきなのは、派遣先において派遣労働者の直接雇用が強制されるという「労働契約の申込みみなし制度」の適用です(労働者派遣法40条の6)。この制度は、(1)派遣禁止業務(港湾運送、建設、警備、医療など)に従事させる(2)無許可の事業主から派遣を受け入れる(3)事業所単位の期間制限に違反する(4)個人単位の期間制限に違反する(5)いわゆる偽装請負(派遣の規制を逃れるために請負を装う)――などの場合に適用され、派遣先が派遣労働者に直接雇用を申し込んだものとみなされます。労働者がこの申込みを承諾すれば、労働契約が成立し、派遣先に直接雇用されることになるのです。

photo 労働契約申込みみなし制度の対象となる違法派遣の類型(厚生労働省のWebサイトより)  

10.派遣元と派遣先で共通認識をもつ

 労働者派遣では、派遣元(派遣会社)が各種手続きや書類作成のノウハウを有していることが多いのですが、小規模の派遣会社の場合、これらが不十分なケースもあります。そこで、派遣先としても、派遣元(派遣会社)に任せきりにするのではなく、派遣の取扱いについてパンフレットなどで最新の情報を確認し、派遣元(派遣会社)と情報交換をきちんとしながら対応する必要があります。

 18年6月に成立した「働き方改革関連法」により、労働者派遣法も改正されました。この改正による「派遣先労働者との均等・均衡規制」(関連記事)の制度は、派遣先としても影響が大きい改正です。派遣先の企業は派遣元(派遣会社)と連携し、共通認識を持って法改正に対応してください。

 事業所単位の派遣期間の制限・延長手続きの手順を以下にまとめます。

1.派遣法における期間制限の内容確認

(1)事業所単位の期間制限/延長

(2)個人単位の期間制限

上記(1)(2)の例外(無期雇用労働者、60歳以上の労働者派遣など)


2.抵触日通知/抵触日の確認


3.過半数組合等への意見聴取手続きの確認

(1)過半数組合/過半数代表の確認

(2)過半数代表等への通知事項の検討


4.過半数代表等からの異議があった場合の対応(説明)を踏まえたスケジュール設定


5.延長後の対応

(1)派遣元(派遣会社)への新たな抵触日を通知

(2)書類の保管・事業所における周知


著者プロフィール

高仲幸雄(たかなか ゆきお)

中山・男澤法律事務所パートナー弁護士 

早稲田大学法学部卒業。2003年弁護士登録。現中山・男澤法律事務所所属。国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師。著者に『改訂版 有期労働契約 締結·更新·雇止めの実務と就業規則』(日本法令)、『異動・出向・組織再編 適正な対応と実務』(労務行政)など著書多数。


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