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» 2018年09月18日 08時00分 公開

人手不足の陰で大量に発生する「人余り」:「生産性を上げても賃金は上がらない?」 伊藤元重学習院大学教授に聞く“日本経済の処方箋” (2/5)

[中西享,ITmedia]

用途不詳の内部留保 「倹約モード」抜け切らぬ企業

――企業の内部留保が多すぎるのではないか。

 内部留保を増やすのは悪いことではないが、日本企業は欧米企業と比べて、もうけてたまった内部留保を使っていない。内部留保の使い道は、配当、賃金、設備投資の3つがある。配当はかなり増やしているのでそこまで深刻な問題ではない。

 賃金と設備投資に十分なお金を回さない理由を企業に聞くと、『先行きの見通しが立たないから』との回答が多かった。今、賃金を上げられても、3〜4年後に景気が悪くなったときに給与を下げられるのか、と考える企業が多い。マクロ経済学的にみると、そこをどうするのかというのが最大のポイントだ。

 だがここにきて、少し良い流れも出てきている。多くのエコノミストが注視している、労働者数と1人当たりの賃金がどれだけ払われているかを表す「総雇用者所得」について直近1年の数字を見ると、前年よりも3〜4%増えた。十分とはいえないが、この半年から1年でマクロ的な成果が少しずつは出てきている。これがどれだけ広がるかに注目したい。

 総雇用者所得が増えた背景にあるのは「人手不足」だろう。企業側も少し楽観的になり、賃金面で処遇を改善することによって優秀な人材をしっかりと確保しようとしている。

 繰り返すが、企業が労働者の賃金にお金を回さないのは重大な問題だ。残業代がカットされた分を自動的に給与に回すようなベストプラクティスのやり方を企業側が広げていく必要はあると思うが、これは政策によって強制する問題ではない。ただ政府部内でも、せっかく労働市場で残業を減らすことができても、可処分所得が減ってしまう状況については憂慮していて、その状況が日本全体の景気を引っ張ることがないようにしたいとは認識している。

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