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» 2018年09月18日 08時00分 公開

人手不足の陰で大量に発生する「人余り」:「生産性を上げても賃金は上がらない?」 伊藤元重学習院大学教授に聞く“日本経済の処方箋” (3/5)

[中西享,ITmedia]

日本経済の成長阻害する「永遠のミスマッチ」

――全般的に人手不足が指摘されているが、産業分野によって人手が足りない分野と、逆に余っている分野があるようだ。

 私は、本当の意味では、日本の労働市場は人手不足ではないと考えている。介護、流通、建設などの分野は有効求人倍率が「3」を超えるほど深刻な人手不足である一方、銀行などが象徴的だがホワイトカラーでは人員が余ってきている。ある時、一般事務サービスという職種の倍率が「0.37」なのを見て驚いたことがある。人手不足と人余りが共存しており、労働市場で業種別に大きな「ミスマッチ」が起きているのだ。これを解消するにはマーケットメカニズムを働かせるしかない。つまり人が不足している分野は、賃金を上げない限り人が集まらないのである。

 人が足りない分野は生産性を上げて賃金を上げ、人を雇うというビジネスモデルを確立しなければならない。一方、潜在的に人が余っている銀行などの分野は、もう少し賃金が上がれば、今の人員を抱えていてはやっていけなくなるはずだ。

生産性を上げても賃金は上がらない?

――日本銀行のレポート『経済・物価情勢の展望(2018年7月)』では、企業は「省力化投資の拡大やビジネス・プロセスの見直しにより、賃金コストの上昇を吸収しようとしている」とあったが、そうすると企業が生産性を上げれば上げるほど、従業員の賃金が上がらなくなるという状況にはならないのか。

 それは難しい問題だが、その場合の賃金が「誰の」賃金なのかという問題にもなる。例えば銀行の仕事は、その多くがITと金融を融合させたフィンテックに取って代わられるだろう。こういう労働力は「技術の代替的な労働力」といわれるが、取って代わられた人の賃金は当然下がる。他方で技術を補完して働くような人の給料は上がっていく。その意味では「技術革新が進めば賃金が下がる」というのは一般的には正しくない。技術革新が進めば賃金が上がる労働者と、残念ながら下がる労働者がいるのだ。

 社会的に何を指向すれば良いのかというと、賃金が下がる労働者は需要が低くなるため、いかにフォローするかを考えなければならない。個人的レベルでみれば、生き残るためにスキルをいかにアップグレードするか、企業レベルでみればどういうビジネスモデルで人員配置をし、投資をするか、社会全体でみると、いかに新しい技術に対応できるような教育や訓練をするのかということになる。

phot

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