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これからの“おもてなし”は、何をしなくていいのか差別化は「引き算」の時代へ(4/4 ページ)

» 2018年09月27日 07時33分 公開
[権田和士ITmedia]
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「おもてなし神話」の再構築へ

 米国からもたらされたサービスのデジタル化の影響を考えるならば、残念ながら「情報化社会において、おもてなしは幻想である」と言わざるを得ない。業種によって緊急性は異なるものの、サービスのデジタル化にともない、遅かれ早かれ「顧客努力の軽減」の実現は避けられないだろう。

 とはいえ、何から着手すればいいだろうか。今までとは180度異なる方針のため、アクションに移すことは容易ではない。現状把握をしようにも今までのCSアンケートはサービスによる付加価値向上を前提としているため、顧客努力を確認するような質問はそもそも設定すらされていない。

 他社の事例に基づいてお伝えすると、まずは「CES(顧客努力指標)」のようなアンケートを実施し、それぞれの顧客接点における顧客努力についての課題を明確にすることからはじめることをお勧めしたい。膨れあがっていた顧客対応について、アンケートから導き出された定量指標を基に、エンジニアリングの視点から引き算することにより、顧客満足度と社員満足度と生産性向上を同時に実現することができる。

 おもてなしの本質的な意味合いが、顧客が真に求めることに応えていくことならば、決しておもてなしの概念自体が陳腐化したわけではない。現在の課題は、情報化社会で求められている顧客ニーズに応えられず、自己満足になってしまったことであろう。であるならば、本来の顧客志向の強みに立ち返り、情報化社会における顧客ニーズである「顧客努力の軽減」にしっかりと向き合っていく先にこそ、おもてなしの未来があることを信じて疑わない。

著者プロフィール:権田和士

 リブ・コンサルティング常務取締役。「100年後の世界を良くする会社を増やす」という企業ミッションの元、急成長企業の経営コンサルティングを行っている。顧客の業績成果に徹底的にこだわるコンサルティングスタイルによって数多くの企業を上場に導いている。早稲田大学商学部、ミシガン大学MBA卒。書籍『おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係』監訳者。


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