土肥: なぜ会社に「辞めます」のひとことが言えないのか。ブラック企業やパワハラなどの問題がからんでいるのかなあと思いますが、依頼者からどのような声を聞いていますか?
新野: 外食産業で働いていた人はこのようなことを言っていました。朝6時に出社して、深夜の2時まで働いて、次の日また6時に出社する。こんな生活を続けていたら、きちんとした睡眠がとれないですよね。朝6時に出社しても、タイムカードを押すのは10時から。なぜそのようなことをするのかというと、上司から「タイムカードを押すな」と言われているから。いまは残業規制が厳しいので、過剰に残業していればその上司が怒られるわけですよ。だから「押すな」と命令される。
深夜2時まで働いて、朝6時から働くのは違う店舗のこともあるんですよね。朝が早いこと、家から遠いことなどもあって、電車で行くことができない。となるとタクシーを利用するわけですが、その交通費は出ない。このように“奴隷”のような働き方をしていると、「自分は大切にされていないな」「会社を信用できない」と感じますよね。
土肥: 企業の担当者と話をしていて、大声を出されたことはありますか?
岡崎: あります、あります。20〜30分ほど説教されて、その人は「じゃあ、お前が働けよ!」「人がいねえんだよ!」などと言ってきました。
新野: あと、依頼者の悪口を言う人もいます。「あいつは使えねえからな。いらないからいいだけどよ」「いらないけれど、最後くらいは来いよ。ま、いらないからいいんだけどな」といった感じで、“いらない”を連呼するんですよね。そうした人の対応を聞いていると、普段から「お前なんか使えない。いらねえよ」といった発言をしているのでしょう。
岡崎: こうした背景があるので、依頼人は「辞めます」という言葉がなかなか言えないのではないでしょうか。
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