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» 2018年10月30日 08時30分 公開

『Dr.スランプ』で「マシリト」と呼ばれた男・鳥嶋和彦の仕事哲学【後編】:「最近の若い奴は」と言う管理職は仕事をしていない――『ジャンプ』伝説の編集長が考える組織論 (3/5)

[今野大一,ITmedia]

雑談を続けることの意味

――どんな狙いがあったのですか。

 若い人には「これをやる意味は2つある」と言いました。1つ目は言葉の力を磨くことです。僕らの仕事は、作家の言葉を聞いて、言葉を使って読者に伝えることです。言葉こそが武器であり、その力を磨かなければビジネスにならないのです。だから人に説明することでその力を磨くのです。人に説明するときには、自分自身で内容を理解していないと伝わる説明はできません。また、人の話を聞くことで自分と他人との違いが分かるのです。

 2つ目はいろいろな社員と顔が見える関係を作ること。100人規模の会社になると、セクションが違えば、顔は知っていても、相手が何を考えてどんな仕事をしているのかは知らないものです。しかし会社の中にいる限り、社内の人間をうまく活用しないと仕事が回っていかないはずです。若い人が自分の戦力を上げるためには、自分のスキルを伸ばすだけでなく、他の社員をどう生かすかという発想を持たなければならないと思うのです。

 そして、とにかく雑談をさせなければならないと思っています。日本人は雑談が下手です。例えばパーティーのときに何を話すか。天気や野球の話だけでは間がもちません。相手の反応を見てヒントを探りながら話しを展開させる。これが雑談です。

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 プレゼンを始めるときは、最初に僕が感じていることや考えたことをエッセイ風に話すところから始めます。その後に若手からプレゼンをしてもらう。私が雑談をすることで、話をするハードルを下げてから本題に入るのです。だから本来の狙いは、お題やテーマがどうこうということよりも雑談を続けることなのです。話をする中で話題を深堀りすること――。これが、編集者が作家と打ち合わせをする際に大切なことであり、根源的なことなのです。

 以前話した平松伸二さん(『ドーベルマン刑事』の漫画家)と話をするために、3カ月間、格闘した話のように(関連記事を参照)、雑談ができれば、打ち合わせは、既に半分は成立しているのです。目の前の人間と雑談ができるかどうか。これは簡単そうに見えて難しいことです。ですが、30分雑談が続けられれば、その相手との相性は悪くないのです。逆にいえば、30分話がもたない人と仕事をするのはやめた方がいい(笑)。

――鳥嶋さんは、この人とは合わないと思ったこともありましたか?

 山ほどありましたよ(笑)。ただ、こういう悩みを持つ後輩に対して必ずアドバイスをするのが、目の前にいる人間を愛するということです。例えば大好きな彼女がいたら、その彼女が「今、何を食べたいと思っているか」「どうすれば喜ぶか」と考えるでしょう。咳をしていたら「大丈夫かな」と気になりますよね? それこそが編集者が作家に対してすべきことなのです。そうすると自ずとやるべきことが見えてきます。

 作家も、編集者が自分のことを大事にしてくれると思えば、厳しいことを言われたとしても、頑張ろうとするのです。言葉は優しくても後から手の平を返す人間と、厳しくてもずっと自分のことを考えてくれる人間――。どちらを大事にするのかは一目瞭然ですよね。こう考えると、物事はごく簡単なことなのです。難しいことは全くないのです。

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