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» 2018年10月30日 08時30分 公開

『Dr.スランプ』で「マシリト」と呼ばれた男・鳥嶋和彦の仕事哲学【後編】:「最近の若い奴は」と言う管理職は仕事をしていない――『ジャンプ』伝説の編集長が考える組織論 (2/5)

[今野大一,ITmedia]

「最近の若い奴は」と言う管理職は仕事をしていない

――コンテンツの制作者は、読者や視聴者のことをどのように感じればいいのでしょうか?

 読者はどのように生活しているのでしょう。例えば、あなたが編集者として新しい企画を立てるときに、どんな資料を参考にしますか? 新聞やテレビ、雑誌などいろいろな情報がありますよね。でも、その企画を成功させるためのデータの半分を、実は既にあなたは持っているはずなのです。

 例えば、朝起きてから夜寝るまでにどのように過ごすのか、現在の生活スタイルは分かっていますよね? その生活の送り方が学生だったころと比べて、どう変わったかも分かっているはずです。

 読者もあなたと同じ時代を生きています。あなた自身が今、何をどのように考えていて、消費者としてどんな風に生活しているのかを思い起こせば、企画に必要な情報の半分は埋まるのです。要は自分の頭で考えるしかないということです。それを仕事だからといって自分で考えることから逃げてしまうと、どこかが作ったマーケティング資料に頼ることになる。そうなると、どこにも根拠がない企画になってしまいます。

 残りの半分は、ターゲットが男性なのか女性なのか、年齢はどの辺りなのかという属性に沿って検討すればいいのです。これも基本的には自分で考えるしかありません。

phot 鳥嶋さんは「読者がどんな生活を送っているのかを自分の頭で考えるしかない」と教えてくれた

――鳥嶋さんは編集者としてご活躍された後、2010年から集英社の専務を、15年からは白泉社の社長を務められています。鳥嶋さんの考えるマネジメントの在り方を教えてください。

 よくどの企業でも「最近の若い奴は」という声が出てきますよね。実は出版社の役員会や幹部会でも「最近の若い奴は育たない」という発言があるんです。何でこういう言葉が出てくるのでしょうか。僕はここに大きな問題があると思っています。

 昔から「出版は人なり」といわれています。だから出版社では漫画家を育てるためにいろんな努力をしながら売れるためのメソッドを作っている。なのに、なぜ社員の育成に対しては情熱を傾けないのでしょうか。

 それは社員に興味がないからです。見ていないのです。マネジメントをしていない。僕はおかしいんじゃないのかと思っています。

 そもそも幹部は何のために会社にいるのでしょう。社員を育てるためです。つまり「若い人が育たない」という発言をすることは「自分は仕事をしていない」と認めるのとイコールなのです。

 英語にはLookとWatchの2つの「見る」がありますね。Lookは単に「見る」ですが、Watchは「見守る」という意味です。社員が現在どんな仕事をしていて、何に関心を持っていて、どのような悩みを抱えているのか。健康状態はいいのか――。

 管理職や会社の幹部はそれらをつぶさに見て、社員を守らなければならない。これができていないのです。

 まずはそういった現状を把握するのが大切です。その後に、例えば採用戦略を考える。新入社員のころと、その社員が3年後、そして5年後にどうなったのかを見比べてみた結果、今年の採用をどうするのか。そのようにフィードバックして考えなければなりませんが、できていないのです。なぜなら今の社員の状況をよく見ていないから。

phot

――そういうマネジメントの在り方は変えなければならないですね。

 僕が白泉社に来てまずしたことは、100人ほどの社員全員と面談をすることでした。総務に来てもらって「全員と面談したい」と伝え、1人30分ずつで1日6人ほど、それで2カ月半かけて全員と面談をしたのです。その面談で感じたのは「現場の若手にやや元気がない」ということです。そこで再度、総務にお願いし、40歳未満の人をピックアップして、年齢も職種もバラバラにして4人1組でチーム分けをしてもらいました。

 月曜日の午前11時から、4人1組で2時間3セット、サンドイッチを食べながらミーティングをするのです。お題は2つ決めました。「あなたが社長になったら」「あなたが編集長になったら」のどちらかを選択してもらい、A4で1枚の資料を作りプレゼンしてもらうのです。それをもとに他の参加者や私とディスカッションするというものです。

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