コラム
» 2018年11月16日 06時30分 公開

就活ルール見直し:新卒一括採用、今後の行く末は? (1/4)

中西宏明経団連会長が就活ルールに対して問題提起をしたことを契機に、長らく議論されてきたルールの見直しが始まった。これまで何か課題で、今後どう変わっていくのだろうか?

[清水仁志,ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

いよいよ始まった就活ルールの見直し

 9月3日、中西宏明経団連会長が就活ルールに対して問題提起をしたことを契機に、長らく議論されてきたルールの見直しが始まった。

 就活ルールの根拠となるのは経団連の「採用選考に関する指針」であるが、その指針は必ずしも守られてはいない。経団連に加盟していない外資、ベンチャー等には指針が適用されず、また、経団連加盟企業においても水面下で就職活動解禁前に学生と接触をしているところも多いと言われている。

就活ルールの見直しで、今後どう変わっていくのだろうか?(写真提供:ゲッティイメージズ) 就活ルールの見直しで、今後どう変わっていくのだろうか?(写真提供:ゲッティイメージズ)

 最近では経団連の指針はあくまでも指針であるとし、大々的に通年採用を実施している企業も存在する。こうしたことから、経団連加盟企業を中心に就活ルールに対して不公平感を抱いていた企業は一定存在していたと考えられる。

 新卒一括採用という就活ルール自体が、現代のビジネス環境に合わなくなってきたことも見直しを後押ししている。秋卒業の留学経験者、外国人留学生、異なる企業での就労経験を持つ中途社員を積極的に採用することで、ダイバーシティの推進を通じ、企業の成長に結び付けることが必要とされているのだ。

 上記の理由から、経団連は2020年度以降に卒業予定の学生については、採用選考の指針を策定しないことに決定した。一方で、採用に関する混乱、学業への配慮等から、何らかのルールはあったほうが良いという声も多く、政府主導でのルール作りが検討されていた。

 10月29日に、政府は20年度に卒業予定の学生については、経団連が定める現状の指針を維持することに決定した。また、急激なルールの変更による学生への混乱を回避するために、21年度以降についてもしばらくは大幅に変更しない方針を示したものの、ルールは毎年検討することから、今後も就活ルール見直しについては議論されることとなっている(図表1)

(図表1)就職・採用活動日程のルール (図表1)就職・採用活動日程のルール

採用活動の早期化・長期化はどこまで進むのか

 就活ルール見直しによる一番の懸念は、採用活動の早期化・長期化だ。

 学生あるいは大学にとっては、就職活動期間が長くなることで学業への影響が心配され、企業にとっても、採用コストが膨らむことが予想されている。政府主導で採用選考に関するルール作りが行われているが、あくまで要請であるため、最終的には採用活動の運用は各企業にゆだねられる。経団連から政府へとルール作りの旗振り役が代わったことで、経団連加盟企業以外へ対象は拡大するものの、強制力を持たないルールでは企業の順守は期待できないだろう。

 現在の企業ごとの主な採用活動開始時期は、外資・ベンチャー→経団連非加盟企業→経団連加盟企業という順だ(※1)。就職人気ランキングで上位を占める経団連加盟企業の採用活動開始を前に、外資・ベンチャー、経団連非加盟企業が先行して優秀な学生を確保しようという構図になっていると考えられる。仮に学生から人気の高い大企業が採用活動を前倒しした場合、その他の企業はさらに早く採用活動を開始するという、いたちごっこになり、採用活動の早期化・長期化は避けられないだろう。

 現在でも大学1年生に対して採用活動を行っている企業も存在しており、学生は大学入学と同時に就職活動を開始し、卒業まで続けなければならなくなる恐れがある。

※1 ただし、一部中小企業等では、大企業の採用活動が一通り終わってから始めるところも存在する。

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