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新卒一括採用、今後の行く末は?就活ルール見直し(2/4 ページ)

» 2018年11月16日 06時30分 公開
[清水仁志ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

地方中小企業、学生に配慮した強制力を持ったルール

 採用活動の早期化・長期化により一番影響が懸念されるのは地方中小企業だ。

 新卒一括採用という効率的な採用システムが見直され、長期間にわたり採用活動をすることは、立地・採用人員の確保などで不利な地方中小企業には痛手となる。また、学生は、早期に内定が獲得できたとしても、少しでも志望が高い企業への就職活動を続けることが予想される。その結果、中小企業は、内定辞退が増加し学生の確保がより困難になる。

 中小企業は全企業の99.7%を占め、従業員数においても全体の70.1%と存在感が大きい(※2)。特に地方では地域の産業を支える中核企業となっている。就職活動の早期化・長期化により、既に人手不足で深刻な問題を抱える地方中小企業に、さらなる追い討ちをかけることになりかねない。

 上記に加え、企業・学生ともに、今後しばらくは混乱が続くものと思われる。政府主導でルール作りが行われても、どの程度の企業がその要請を守るのかわからないため、常に就職・採用活動を行わざるを得ない状況が続く。結果として、無秩序な採用活動となれば、企業・学生とも倒れとなるリスクが存在する。

 政府は、こうしたことを考慮し、マイナスの影響が大きい地方中小企業、学生に配慮しつつ、一定の強制力を持ったルール作りを行うべきだろう。ルール見直しによる企業・学生の混乱を回避するためには企業ごとの採用活動の透明化が必要だ。現在のようにルール自体は存在するが採用実態はバラバラとなってしまっては意味がなく、明確に守られるルールでなければならない。

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