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「働かない」ことばかり注目されている日本は大丈夫か?ここが変だよ、日本の「働き方改革」(2/4 ページ)

» 2018年11月26日 07時30分 公開
[伊藤慎介ITmedia]

自分の限界を超えて働く

 私が就職した約20年前を振り返ってみると、今のようなワーク・ライフ・バランスや残業規制など全く想像できなかった。通商産業省は別名“通常(つうじょう)残業省(ざんぎょうしょう)”と呼ばれており、入省10年目くらいまでは終電で帰宅できれば良いほうであり、深夜1時、2時まで働くことは当たり前の毎日だった。自分自身も、若いうちに頑張らなければ実力のある官僚になれないという気持ちが一杯で、そのことに違和感を持ったことはなかった。

 2005年に初めて課長補佐になり自動車産業を担当することになってからは、父親と近い年齢である大手メーカーの人たちと仕事をすることが増えた。自分よりも20年以上も社会経験のある人たちと対等に議論するのだから、失礼のないように自分は2倍も3倍も頑張らなければならないと気を引き締めて職務に取り組んでいたことを記憶している。

 一方で、そうやってあふれんばかりの仕事に追われるようになると、なるべく自力で全ての仕事をこなそうとしていた自分の限界にぶつかった。上司からのちょっとしたアドバイスがきっかけとなり、部下や同僚にどのようにして仕事を任せればよいのか、自分のチームだけに閉じずに業界団体や民間企業の人たちにサポートしてもらうにはどうすればよいのかなどを考えるようになり、組織で仕事をすることの強みを生かす術を徐々に身に付けていったように思う。

 自分の限界にぶつからなければとてもそのような境地には至らなかったはずなので、120%、150%の仕事量にぶつかるといった自分の想像を超える仕事に直面することの重要性を思い知った体験だった。

 4年前に官僚を辞めてベンチャー企業を起業してからは、安定した給料をもらえるサラリーマンがどれほどありがたかったのかを身をもって知ることになった。

 経営者として実際に会社を運営していると、頑張って稼がなければ会社の経費も自分の給料もとても払えないという切迫感に常にさらされる。実際、ものづくりに挑戦していた時は開発費が想定以上に膨らんだために、自分自身の給料を何カ月も支払えない状態が続いた。

 このような生々しい体験をしてみると、頑張って働く→会社が収益を稼ぐ→給料をもらえるという感覚が肌身にしみついていくものだ。

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