なぜ日本のプロ野球選手に、愛煙家が多いのか赤坂8丁目発 スポーツ246(5/5 ページ)

» 2018年12月14日 07時39分 公開
[臼北信行ITmedia]
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「タバコ完全脱却」は実現するのか

 一方、かつての巨人では現役時代の桑田真澄氏が、当時周囲の大半を占めていた喫煙選手たちのタバコの煙に耐えかねて、球団側に分煙を要請。施設内での分煙化や専用移動バスを禁煙車と喫煙車の2台用意することを認めさせ、大きな話題を呼んだ。だが桑田氏の勇気ある行動は結局それ以上の動きにまで発展せず、現在も巨人はもちろん日本プロ野球界全体も喫煙の全面禁止には至っていない。

 ちなみに米国のメジャーリーグは日本プロ野球よりも、禁煙に関してかなり先を進んでいる。煙が出るタバコは言うまでもなくNGだが、米国内の都市法令によってボストン・レッドソックス、ニューヨーク・ヤンキース、ニューヨーク・メッツ、シカゴ・カブス、シカゴ・ホワイトソックス、サンフランシスコ・ジャイアンツ、ロサンゼルス・ドジャースの各本拠地球場では無煙タバコの使用も禁止だ。

 従って選手たちがクチャクチャやりながら愛用していた無煙のかみタバコは、この7カ所の球場で摂取できなくなった。しかも昨季の17年シーズンからはMLB機構側と選手会側が合意した新労使協定によって、同年以降メジャーデビューする全選手の球場での無煙タバコ使用が全面的に禁止されるようにもなっている。

 これにより、メジャーリーガーのかみタバコ愛好家は近い将来、完全に「ゼロ」となる見込みだ。ニコチン依存は自身の健康に悪影響を与えるだけでなく、憧れの対象となるメジャーリーガーたちのマネを子どもたちがしてしまう危険性があることを行政及びメジャーリーグ側は危惧し、これに釘を刺した格好といえる。

 今からでも遅くはないはずだ。日本もプロ・アマ全体が危機感を抱き、球界からの「タバコ完全脱却」に向けて力を入れるように強く求めたい。そうでなければ日本球界はいつまで経っても健康志向の流れから取り残され、時代錯誤と世界中からバカにされるだけだろう。

臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:

 国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。

 野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ、2018年平昌)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。


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