マーケティング・シンカ論

心折れる営業のテレアポ地獄、ビッグデータが撲滅!?セールステック企業が挑戦(2/3 ページ)

» 2018年12月17日 09時45分 公開
[服部良祐ITmedia]

「営業が何もしなくてもアポとれるように」

 多くの法人向け営業マンは見こみ顧客企業にテレアポしたうえで商談し、見積もり、受注という業務の流れを取る。必要なアポ取りはたいていアナログ作業だ。自社の新規顧客になりそうな企業をWebで検索して1社1社書き出し、リスト化する。「中小では日中は外回りして、帰社後に夜遅くまでデスクでリストを作っている人が多い」(川村社長)。Web上の企業情報をあらかじめデータベース化すれば、いちいち手動でリスト作成する必要が無くなると考えた。

photo Onionが開発する営業の自動化サービス「APOLLO SALES」(同社のWebサイトから引用)

 さらに「商材や担当者にもよるが、法人営業は1日100件電話して1〜2件アポを取れればましな方」(川村社長)。テレアポの成功率を高めることで、断られ続けてきた営業マンのコストや心理的負担も減らせるとみる。

 特にテレアポは新人営業マンに商品説明の習得も兼ねて任されることが多い。「テレアポ担当になった新人が1〜2カ月で辞めてしまう話をよく聞く。LINEなどが当たり前のデジタルネイティブ世代にはつらい作業なのかも」(川村社長)。営業に多大な人手を割けない企業向けニーズに加え、新人営業マンの離職防止も期待する。

 同社はAI(人工知能)の開発も進めており、収集データを分析させることでさらに営業業務の自動化を図る。例えば、これまで見こみ顧客にアプローチした結果などのビッグデータをAIが学習することで、顧客企業ごとに「今、どの会社に最もアプローチするべきか」を提案する機能を開発中だ。

 現在は一様に同じ内容にしている企業への事前メールについても「御社が今、Webサイトで採用を強化しているのを見てお送りしました」などと、対象企業によって最適な文面に自動変更するサービスにも取り組む。いくつかの文章パターンをあらかじめ用意しておき、顧客企業に応じてAIが選択する。川村社長は「いずれは営業が何もしなくてもアポが取れるサービスにしたい」と意気込む。

 Onionはまだスタッフ8人、16年創設の若いベンチャーだ。川村社長によると、同様にITで営業・販売業務を改善する「セールステック」を主に扱う企業は日本ではまだ50社程度という。5000社に達したとされる米国に比べるとまだ少数だが、深刻な人手不足を背景に日本でもこれから伸長する市場とみる。

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