――ギグエコはインダストリー4.0(第4次産業革命)とも関連して議論されていますが。
ギグエコと第4次産業革命に共通しているキーワードは、「つなぐ」です。ギグエコはスマホのアプリを通して瞬時に、サービス提供者と利用者とをつなぎます。
一方の第4次産業革命は、ICTやビッグデータ、AIを使いながら、いろんなビジネスパートナーを瞬時につなぐのです。それで研究開発データを会社間で共有して製造販売に役立てるとか、部品調達に関する情報を一気に同期させることで効率的に生産をし、品切れも過剰在庫も防ぐといった狙いが背景にありました。
ICTやビッグデータ、AIが発達しなければ生まれないという点で、ギグエコと第4次産業革命は同根、つまりほぼ同じ形で起こっているのです。
フリーランスの「自由な働き方」の広がりが、個人のワークライフバランスの実現に資する可能性はもちろんあります。ただそれは、実は副次的なゴールであって、日本政府が目指す「働き方改革」の大きなゴールは、「世界の潮流に乗り遅れたくない」ということなのではないでしょうか。問題は、日本が欧米に比べて「本当に乗り遅れているのかどうか」ということです。
――なるほど。興味深いです。
例えばグローバル企業の利益額20傑(20位)のなかに、日本企業ではトヨタ自動車が1社入っています。中国からは金融やIT系の企業がいくつも入っています。米国も同様です。EUは製薬企業などが入っていますが、日本で20位に入っているのはやはり製造業なのです。日本は結局、製造業に立ち返るというわけです。
現在、日本ではAI関係の技術者や、プラットフォームをベースとしたアイデアを出す人たちが足りていない状況です。そしてよく言われるのが「日本の大企業がAI人材を抱え込んでいるのだろう。だから、新卒で採用された高学歴の人材が、日本的雇用慣行のなかでくすぶっているに違いない」ということですね。
ただ、私は、そういった認識は「想像の産物」だとも思うのです。そういうステレオタイプな図式のなかで考えられた「解決策」として、企業に雇われないフリーランスのような働き方があらためて提示されたのではないでしょうか。「日本的雇用を壊せば、固定観念をブレークスルー(突破)するような意欲的な人材と、斬新なアイデアが生まれてくるはずだ」という考えのもとに、です。
これは、新しい方法が生み出されれば、古いやり方は駆逐されていくという、いわゆる「創造的破壊」という概念に近い話なのだと思います。ですが、創造的破壊はある程度ゴールがあって初めて実現できる話であって、破壊によって創造が生まれるわけではないと私は思います。今起こっているのはそれに近いのではないでしょうか。
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