――外資系IT企業の働き方はどうなっているのでしょう。
外資系IT企業がワークライフバランスについて何を考えているかというと、「いつでも、どこでも、より長く働いてほしい」ということです。
彼らは「いつ働いてもらってもいい」と考えています。子どもを寝かしつけた後でもいいし、極端にいえば会社に来なくてもいいのです。イントラネット上で同僚同士の仕事の連携を促進したり、モニタリングしたりするような仕掛けが随所にあるから、そういえるのです。それでも、IT系の企業では在宅ワークを推奨していません。face to faceの方が仕事も速く進みますし、実際にはIT企業だからこそ、人間同士のつながりを大事にしているからです。
例えばグーグルで、こんな事例が紹介されています。プロジェクトのメンバーたちがなかなか自分の意見を言ってくれず会議が活性化しない。ある時リーダーが、自分はいま、がんと闘病中であるというパーソナルな話をしたら、そこから一気にメンバーもパーソナルな話をしてくれるようになって、チームワークが高まったそうです。
競争力の根っこにあるのは「人間同士のネットワークをいかに最適につなぐか」だということを、多国籍企業のトップは分かっているのです。グローバルで戦っている日本企業のトップも分かっているでしょう。日本的雇用の長所はこの「つなぐ力」であり、もう一度そこに立ち返る必要があるのではないでしょうか。
1月11日(金)に記事の後編を公開いたします。お見逃しなく!
北健一(きた けんいち)
ジャーナリスト。1965年広島県生まれ。経済、労働、社会問題などを取材し、JAL「骨折フライト」、郵便局の「お立ち台」など、企業と働き手との接点で起きる事件を週刊誌、専門紙などでレポート。著書に『電通事件 なぜ死ぬまで働かなければならないか』(旬報社)、『その印鑑、押してはいけない!』(朝日新聞社)、共著に『コンビニオーナーになってはいけない 便利さの裏側に隠された不都合な真実』(旬報社)、『委託・請負で働く人のトラブル対処法』(東洋経済新報社)ほか。ルポ「海の学校」で第13回週刊金曜日ルポ大賞優秀賞を受賞。
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