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「欧米に立ち遅れている」という認識は幻想 日本的雇用の“絶対的長所”にも目を向けよ労働政策研究・研修機構 主任調査員に聞く(前編)(5/6 ページ)

» 2019年01月08日 06時00分 公開
[北健一ITmedia]

日本的雇用には長所がある

――会社の本体に残す人たちに長く働いてほしいから、報酬も福利厚生も厚くするというのは、まるで「日本的雇用の長所」の話みたいですね。

 そうですね。欧米でも、会社の本体に残す人たちには長く働いてほしいことは変わらないのです。異動に関しても同じことがいえますね。

 例えば社内にプロジェクトをいくつも走らせるときは、欧米の企業でも社内から参加希望者を募ります。「やりたい人は手を挙げてください」と言うのです。プロジェクトリーダーの席が空いたときも社内で募集しますが、そのポストには社内のプロジェクトに広く参加した人や、専門外のプロジェクトにも参加した人が選ばれていきます。

 日本のように、異動を「辞令で強制する」のか、欧米のように「異動しないと昇進できずに給料も上がりませんよ」という形で促すかの違いはもちろんあります。ですが、内部でいろんな経験を積み職域を広げた人を幹部に据えるやり方は、欧米でも同様なのです。

――なるほど。よく語られる欧米企業はジョブ型で「契約で決めた特定の仕事(ジョブ)」だけをし、日本企業はメンバーシップ型だから、会社の指示でどの部署にでも行き、何でもするという図式とはかなり違いますね。

 その通りです。いわゆるジョブ型の「専門的な仕事をし、専門性で評価される」という仕組みではないのです。より職域を広げた人材が勝つシステムなのです。

 それから、アウトソースでできる仕事をフリーランスでまかなうといっても、実際には仕事の質の担保が難しいのが現実です。だから、製造業でのEMS(electronics manufacturing service、受託生産サービス)など、アウトソースを請ける会社が売り上げを伸ばしましたよね。その代表格が鴻海(ホンハイ)です。

――家電製品など、軒並み委託をしていますね。

 そうですね。他方、自動車では、なぜ製造を外部に委託できないかといえば、部品点数が多く製造工程が複雑だからです。航空産業と同様ですね。

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