土肥: 「無人古本屋」というアイデアが浮かんだわけですが、次にどんなことをしたのでしょうか?
中西: 無人販売の仕組みはどうなっているんだろうと考え、実際に足を運びました。東京の武蔵野市にも野菜を無人で販売しているところがあったので、そこを見学することに。見ていて、やっぱりこの仕組みはいいなあと感じたんですよね。
土肥: いや、ちょっと待ってください。失礼な話になりますが、棚やカゴのなかに野菜が入っているだけですよね。「キャベツ 100円」などと書かれていて、お金は箱のなかに入れるといった感じ。この仕組みのどこがいいなあと思ったのでしょうか?
中西: 無人で販売していたら野菜を盗まれるかもしれないのに、継続してやっている。ということは「人の善意」の部分で成立しているんですよね。個人的に「人を信じたい」と思っているので、古本を無人で販売することができれば、社会実験としても何か得られることがあるのではないかと考えました。
電車に乗っていて、お年寄りが乗って来ると、若い人が席を譲る光景を目にすることがありますよね。もちろん、席を譲る人もいれば、譲らない人もいる。無人の古本屋は、席を譲るような人が利用してくれればいいのではないかと考えました。
次に、物件探しを始めました。たくさんの本が売れるとは思っていなかったので、家賃はできるだけ抑えなければいけない。駅から近ければ、人が多いのでいいのかなあと思ったのですが、家賃は高くなる。また駅から近いところに店を構えると、いろんな人たちが入店するかもしれない。たくさんの人が来店してくれるのはうれしいのですが、いろんな人が来られるのはちょっと困ると考えました。
土肥: どういうことですが、いろんな人が来られて困るって。
中西: 先ほど申し上げたように、この店はお年寄りに席を譲るような人に利用していただきたい。席を譲らないような人や本を好きでない人などが来られると、ちょっと困る。ということで駅から少し遠くて、地元の人しか知らないようなところがいいのではないか。このように考えて、三鷹駅から15分ほど離れている商店街の一角に店を構えることにしました。
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