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残業削減に「魔法の杖」は無い 働き方改革がうまくいかないこれだけの理由「残業学」教授が解き明かす(2/4 ページ)

» 2019年01月28日 07時15分 公開
[服部良祐ITmedia]

「ワークライフバランス」への誤解

――そこで、数ある施策の中で鍵として強調しているのが、残業時間の「見える化」と「残業代の還元」です。特に後者は、従業員が生活費の一部として当てにしていた残業代を別の形で支払って埋め合わせるという提案で、理にかなっているように思えます。ただ、労働者と経営者の双方がしっかり理解していないと誤解が生まれる気もします。

中原: 残業対策は働く側にも、働かせる側にも働きかけなくてはいけないものです。例えば「ワークライフバランス」という言葉があります。良い理念ですが、その言葉1つだけではうまくいかない。

 経営者にワークライフバランスと言うと、「それって(従業員が)仕事しなくなることでは?」と思われがちです。経営者の観点からするとネガティブワードなわけです。一方で現場の管理職が「ワークライフバランス」という言葉を聞くと、「また人事がめんどくさいことを言い始めた」と思うでしょうね。この手の問題は多いです。

 残業代の補填という手法も、浮いた残業代の分を誰か(の給与)に加算すればいいといったもので、実はそれほど原資のかかる話ではありません。ただ、経営者にとっては(施策を導入する際に)「ワークライフバランス」などと言われた瞬間、従業員が働かなくなると思ってしまう。感情レベルの誤解がこういった概念の中に含まれているため、今もうまくいっていないのだと思います。

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