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あなたは「上司の命令なし、社員が何でも決める」職場で働きたいか天国? それとも地獄?(2/4 ページ)

» 2019年03月04日 07時30分 公開
[服部良祐ITmedia]

同僚のボーナス額評価を嫌がった社員たち

 社員も陰で同じような不満を抱えていた。保険会社から14年末に同社に転職した大山亜矢子さんは「坂東社長は自分の価値観をちょっと押し付け過ぎな面もあった。新卒の子たちへの指導は、私のいた保険業界よりも徹底して高いレベルを求めていた。日報の書き方一つとっても、自分の考えるルールやマナーをちょっと強制していたかもしれない」と振り返る。

 「今まで(経営が振るわない)原因は誰かにあると押し付けてきたが、原因は僕だったのかもしれない」と考えた坂東社長。上記の“決意表明”を機に、企業ビジョンから売り上げ目標、掃除係の決め方に至るまで、職場でのあらゆるルールや方針をリセットし、決定権を社員に委譲していくことにした。

 まず行ったのが情報の透明化だった。決算情報と社長を含めた社員全員の給料を社内で公開。給与額は全員で話し合って決めることにした。「恐る恐る、どうなるんだろうと思いながらの実験だった」(坂東社長)。

 給料の金額は決算の枠組みや世間での相場を元に話し合っていったが、やはり不満は少したまっていた。しばらくたって、とある社員から「あの時の自分の給料額には不満だった。(世間の)平均額で自分を捉えないでほしい」と打ち明けられた。もともと大手企業にいた、業界でも明らかに実力の高い人物だった。

 ボーナスの金額をすり合わせる際も、社員たちから「他人を評価するのも、その評価をお金に換えるのも嫌。そんなことするくらいなら、いっそボーナスは欲しくない」と不平不満が出た。「昔の会社人にとって他人を評価できることは権限の象徴だった。でも今、人を評価したいと思う人は基本的にいないのかもしれない。チーム作りの上で、互いを評価するのはとてもデリケートなことだった」と坂東社長は語る。

「社長、茶道の会は経費ですか!?」

 社長から見れば不可解なほど社員がこだわった案件もあった。例えば、社長が仕事上の交際費で使う経費だ。18年に社員にすべて情報公開したところ「当時も隠したり間違った使い方はしていないつもりだったが、社員の間で炎上した」(坂東社長)。「経営者の茶道の会の経費と書いてあるが、茶道がOKなら私のヨガ教室も経費で落ちるのでは」などと追及された。

 社員の大山さんも「この経費を使って本当に契約が取れていればいいけれど、実際は違うと感じた」と振り返る。結局、経営目的と社長のプライベート目的の費用を社長自身が分別するたたき台を作って全員で議論し、生活費としてどうしても必要な部分は社長の給与に上乗せするなど改善して納得してもらった。

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