2019年5月1日に元号が変わり、新たな時代が幕を開ける。平成の約30年間でビジネス環境は大きく変化した。その最大の要因はインターネットの登場である。しかし一方で、働き方や企業組織の本質は昭和の時代から一向に変わっていないように思える。新時代に突入する中、いつまでも古びた仕事のやり方、考え方で日本企業は生き残れるのだろうか……? 本特集では、ポスト平成の働き方、企業のあるべき姿を探る。
第1回:「平成女子」の憂鬱 職場に取り憑く“昭和の亡霊”の正体とは?
第2回:「東大博士の起業家」ジーンクエスト高橋祥子が考える“ポスト平成の働き方”
第3回:「3年以内に辞める若手は根性なし」という批判が、時代遅れになった理由
第5回:麻布、東大、興銀……エリートコースをあえて捨てた男の仕事論
第6回:本記事
ある日突然、職場で社長が「もう皆さんには命令しません。事業方針も給料も自分たちで決めてね」などと言い出したら、どう思うだろうか。日本企業では平社員の上に管理職、そのまた上には役員や社長がいる、というピラミッド型の指揮系統があまりにも一般的だ。
しかし最近、そういった職場のヒエラルキーを無くそうとする企業の運営手法が脚光を浴びている。2018年には「ティール組織」や「ホラクラシー組織」といった概念がビジネス書の世界で話題になった。特に日本では職場で役職や序列を無くしたり、社員が上司の命令を受けなくても自律的に決定して行動する、といった文脈で理解されている。
「社員が自律的に働く」というと聞こえはいいが、上意下達のシステムで動いている会社の社員や管理職からみると「混乱しそう」「なぜわざわざそんなことを……」と疑問も沸きそうなこの取り組み。四苦八苦しながらこうした「自律的経営」を職場に取り入れていった企業のドラマを追った。
ブレスカンパニー(福岡市)は、企業の人材や組織運営の支援を手掛けるコンサルティング会社。17年夏、当時社員数10人ほど在籍していた職場で坂東孝浩社長が突然、「ホラクラシー経営にしよう!」と呼び掛けた。新しいアイデア好きな坂東社長の性格をよく知っていた社員たちも、今回はあっけにとられた。
ホラクラシー組織は米国の企業が定めた組織運営の形態の1つで、厳密には「ホラクラシー憲法」という規定に乗っ取って運用することになっている。ただ、日本では「社員が自律的に判断」「階級や役職がない」といった内容でよく捉えられており、坂東社長の狙いも「経営者の権限を社員に手放すこと」にあった。
背景にあったのは、同社で社長も社員も一様に感じていた閉塞感だった。当時、会社の理念や事業計画、給与額の決定や出退勤時間に至るまで坂東社長がすべて1人で決めていた。一般的な中小企業なら普通の風景だ。
一方で会社の実績は伸び悩んでいた。「特に僕が『若いうちは勉強しろ』『掃除する習慣を身に付けろ』とか、固定概念を部下に押し付け過ぎていた。外発的な動機でやらされているから、社員のパフォーマンスが最大化されていない。トップダウンの限界だと思った」(坂東)。
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