年配の方は覚えておられるだろうが、30年ほど前の宅配業界は「戦争」と評されるほどし烈な価格競争で、シェアの奪い合いが行われてきた。自分たちの会社のマークが入ったトラックを全国隅々までゆき渡らせて、受け取りも配達もすべて自分たちの会社が管理したドライバーが行い、ライバルから1人でも多くの客、1つでも多くの荷物を奪っていく。その強烈な自前主義で時に国と対立をしながら、業界盟主の座に上り詰めたのがヤマト運輸である。
そんなヤマトが、ライバルの佐川や、かつて批判していた郵便と一緒に共同配達や共同配送に取り組む。12年前でさえ反発があるのだから、もし30年前にそんなことを口走っていたら完全に狂人扱いだっただろう。
しかし、ドライバー不足や劣悪な労働環境という宅配クライシスに直面して、常識が根底から覆された。同じくバイト不足やブラック労働が指摘され、クライシスの兆しが見えてきたコンビニも常識の崩壊があるのではないか。
今は「店舗の共有化」など狂人の戯言のように聞こえるかもしれない。しかし、24時間営業というコンビニの根幹をなす方針ができないという声が上がっている。FCオーナーの過労死や、「変態セブン」などの異常な行動なども続発している。
これらが来るべき「コンビニクライシス」の前兆だとすれば、クライシスを経て、ヤマトと佐川が配送で手を取り合うことが常識となったように、コンビニ3社が1つ屋根の下で協力をするのも当たり前になるのではないのか。
宅配とコンビニを一緒に語るなというお叱りもあるかもしれないが、実は両者のビジネスモデルは根っこの部分で驚くほど似ている。例えば、先ほどの宅配戦争の中で、ヤマトの創業者、小倉昌男社長はこんなことを述べている。
『宅配決戦の年を迎えた今年は、あらゆる手段で全国網を完成させる』(日経産業新聞 1983年1月20日)
ヤマト運輸の配送網で全国を塗りつぶして、郵便のようなインフラになるというのだ。そう聞くと、何かと似ていると思わないか。そう、セブン-イレブンの競争力の根幹をなすドミナント戦略である。
今年7月に沖縄へ出店を果たすと、「セブンの全国制覇達成」と報じられているように、セブン-イレブンもヤマト同様に全国網の完成を目指してきた。日本という地図を塗りつぶすことが、インフラとしての役割だというのだ。
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