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建て替えで揉める「老朽化マンション」 住民合意の「秘策」とは?人間関係がこじれると「ご破算」に(2/6 ページ)

» 2019年03月13日 05時00分 公開
[中西享ITmedia]

「茶話会」で理解を深める

 この間、建て替え反対の意見も出た。だが、住民の意見交流の場として「茶話会」を何度も開いたことで理解も深まり、11年12月の総会では、住民の5分の4以上の賛成を得て(非賛成者14人)「一括建替え決議」にこぎつけた。最終的には住民全員が同意した。

 だが、建て替え工事着工直前の11年3月に東日本大震災が起き、工事費が大幅に上がったため「地下室部分の仕様を変更するなど、工事費用を軽減して非常事態を乗り切った」(花房副所長)という。

 建設期間中の約3年間の仮住まいを経て、15年5月から新しい建物への入居が始まり、176戸だった団地は331戸に拡大し、新しい団地(8階建て一部6階、エレベーター付き)として生まれ変わった。建て替えの声の上がった08年の「住宅を考える会」から新しい団地が完成する15年5月までに7年5カ月間掛かった計算になる。

挑発発言に乗らない

 多田さんは、反対者が建て替えに反対する理由として「一つは、自身が委員会のメンバーでないことが反対の大きな理由だった。団地内の人間関係も影響していたようだ。私は中古住宅を買って引っ越してきたので、この団地の人間関係のしがらみがなかった。だから、活動のしやすさにつながったのかもしれない」と振り返る。

 また、「推進委員ではあったが、住民に『建て替えに賛成してください』とは決して言わなかった。『ご自身の財産にかかわることなので、お友達の賛成反対に影響されずに、ご家族と相談して自分で判断してください』と訴えた。反対者のさまざまな行動もあったが、住民がその人たちに建て替えのメリットを説くなど、住民の協力も大きな力となった」と話す。

 多田さんと一緒に資料作りをした主婦たちは、この活動を振り返って「大変だったが、部活のようで楽しかった」と話しているようで、多田さんは「建て替えが失敗することは考えなかった」と語る。

phot 分譲マンションストック戸数(国土交通省のWebサイトより)
phot 築40年超のマンションは73万件近い(国土交通省のWebサイトより)

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