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» 2019年03月13日 05時00分 公開

建て替えで揉める「老朽化マンション」 住民合意の「秘策」とは?人間関係がこじれると「ご破算」に(3/6 ページ)

[中西享,ITmedia]

恵まれた経済条件

 調布富士見町住宅を建て替えた時は、都市計画法の「一団地の住宅施設」に関する国や東京都など、行政の方針転換があった。行政協議の結果として、容積率が80%から200%に緩和されるなど、良いタイミングに恵まれたこともあったが、経済状況が今よりも良かったことも見逃せない。このおかげで、建て替え前は176戸だったのが331戸に大幅に拡大、増えた分は第三者に新規に分譲販売できたため、その分を建て替え資金に回すことができた。

 この結果、自己負担が少なくて済んだ。また、建て替えに際して、176戸中、71戸が権利変換時に保証金を受け取って転出したが、保証金の条件が良かったため、この資金を活用して施設に入った高齢者や、子どもの住まいの近くにマンションを購入して引っ越すなど、それぞれの希望をかなえた住民も多かったという。結果的にこの建て替えは成功した。

phot 建て替え前の調布富士見町住宅(以下、マンションの写真は旭化成不動産レジデンス提供)
phot 建て替え後の調布富士見町住宅

修繕費用が足りない

 もう一つの事例が東京都新宿区の四谷コーポラス(民間企業による初の分譲マンションで1956年に完成した5階建てのマンション)で、28戸(所有者が25人)が入居していた。建築されて60年以上が経過していたため、大規模修繕をするか建て替えをするか住民のアンケートを取ったところ、建て替えを希望する意見が多かった。このマンションの建て替え委員長をやってきた島田勝八郎さんは振り返る。

 「13年ころに耐震診断をしたところ補強工事に5億円程度掛かることが分かった。また、給排水管からの水漏れトラブルが多発し、配水管交換の検討を業者に依頼したところ、このマンションは配水管交換を想定しておらず、上層階の配管が下の部屋の玄関天井を経由していて、その工事期間中は退去が必要だと報告があった。そのため、臨時総会を開き、配管工事は物理的に実施が難しいことを細かく説明した。当時、修繕積立金は7000万円ほどあったが、修繕を実施するとなれば、修繕費用総額を各戸で割ると1000万円以上の持ち出しになることが判明した。

 このため、14年にできた『再生検討委員会』では、大規模修繕よりは建て替えにした方が良いという意見に傾いていった。何人かは『まだ修繕すれば(マンションは)持つよ』という人はいたが、アドバイザーが各戸ごとの具体的な建て替え費用を示したことで、建て替えのイメージを持つことができるようになり、大規模修繕の話は立ち消えになった」

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