以上が取材内容だ。今回取り上げた事例は住民合意の取り付けも比較的スムーズに進み、建て替えに伴う住民の負担も少ないなど、条件的には恵まれていた。しかし、これから建て替えが必要となるマンションの多くは、容積率の緩和は期待できないケースが多く、住民の追加負担が増えそうだ。そうなると住民の意見が割れて合意形成は簡単にはいかない。花房副所長が強調するように「建て替えの機運が高まるところまで持っていくのが重要」になってくる。
住民のまとめ役となる住民代表の動き方もポイントになりそうだ。調布のケースのように、人間関係がこじれるとまとまる話もまとまらなくなる恐れがある。その意味で、委員長や理事といった役員になる人は、世話役に徹するべきだ。立場上、前に出がちだが、自分の意見を言うのは極力控えてわき役として動いたほうが最終的にはうまくいくことを示唆している。
これからは住民の中に高齢者の割合が増えてくるため、どうしても多くの資金負担が伴う建て替えには消極的になりがちで、世代を超えた住民の合意形成が必要になる。大規模修繕や建て替えといったマンション全体にかかわることには、他人任せで無関心の住民が多い。その中で、建て替えという住民ムーブメントを作り上げるのは並大抵のことではない。建て替えが進むかどうかは、「マンション民主主義」が機能するかどうかにかかっている。
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