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「睡眠時間が長い社員」に報酬 異例の福利厚生はなぜ生まれ、どんな効果を生んだ?ブライダル企業「CRAZY」社長が語る(1/3 ページ)

» 2019年03月14日 04時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 1週間のうち5日以上、6時間以上の睡眠を取った社員に対し、社内食堂などの買い物で使えるポイントを提供する――。ブライダル企業のCRAZY(東京都墨田区)は2018年10月から、こんな福利厚生制度を始めている。

 社員の健康促進と生産性向上を図る狙いで、その名も「睡眠報酬制度」。繁忙期は激務になりがちな婚礼業界だが、同社はよく眠った社員を表彰するなど施策の浸透に注力し、現在は全社員(85人)の5〜6割が利用している。

photo 「よく眠る社員」に報酬を付与する福利厚生制度が存在する(画像提供:Getty Images)

 テレワークを許可したり、一部業務をアウトソースしたりと、仕事の取り組み方を見直すことで「働き方改革」を進める企業は多いが、睡眠という“業務外”の習慣の改善を図ろうとする企業はあまり見かけない。

 CRAZYはなぜ、この制度を始めたのか。また、開始から5カ月で社内にどんな変化があったのか。同社は3月13日に会見を開き、詳細を明らかにした。

社員が健康じゃないともうからない

 「社員が健康じゃないと(生産性が落ちて)もうからないし、経営者も幸せじゃない。睡眠にメスを入れたいと思っていた」。CRAZYの森山和彦社長はこう話す。

 この制度を始める前、同社スタッフの平均睡眠時間は約5時間30分。社内調査で「週に1日〜ほぼ毎日、睡眠・休息の取り方が原因でパフォーマンスが出ない日がある」と答える人が7割を占めるなど、多忙やプライベートの習慣によって長く眠れない人が多かった。

 改善の必要性を感じていた森山社長は試行錯誤の末、「現代は労動管理が重要視されているが、世の中には逆転の発想が必要。あえて労働以外のことを管理し、『寝たらお金が出る』という制度を作ったら面白い」とひらめいた。

エアウィーヴ社長も協力

photo 「airweave sleep analysis」の画面を見せる、CRAZYの森山和彦社長

 そんな折、森山社長はひょんなことから、寝具メーカー・エアウィーヴ(東京都中央区)の高岡本州社長と知り合う機会を得た。一連の社内課題を伝え、協力を願い出たところ、高岡社長は快諾。エアウィーヴの知見を取り入れながら睡眠の改善に向けた福利厚生制度を整えることが決まった。

 こうしてできた「睡眠報酬制度」では、社員の睡眠時間の測定に、エアウィーヴが開発した睡眠計測アプリ「airweave sleep analysis」を使用。同アプリは、起動させた上でスマートフォンを枕元に置いたまま寝ると、睡眠中の体の動きを感知し、睡眠時間や寝つき、眠りの深さなどを測定できる仕組みだ。CRAZYの社員は、測定結果をダウンロードし、CVS形式で会社側に提出することで、ポイントを獲得できる。

 また、CRAZYの社員は眠りの質を高めるため、エアウィーヴの寝具を割安で購入することも可能という。

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