指導者には恵まれたが、ネオ・ジオンが置かれた状況は厳しかった。もともと、ジオン公国は地球連邦政府に国力で劣っていたが、そのジオン公国のごく一部の資源衛星と敗残兵の集まりがネオ・ジオンである。地球連邦と比較して、50分の1どころか0コンマの勢力だったとみられる。
なぜ、ネオ・ジオンは再び地球圏に舞い戻り、覇を競うことができたのか。
一つには、資源が豊富だったことが挙げられる。アクシズ自体が資源衛星であり、周囲の隕石からも鉱物資源を採掘できた。また、木星から採取したヘリウム3が貯蔵されていた可能性が高い。これらの資源があれば、動力炉を含めたMS一式をアクシズで生産できる。
技術者も優秀だったのだろう。宇宙世紀0083年のデラーズ紛争のおり、アクシズからデラーズ・フリートに巨大MA(モビルアーマー)ノイエ・ジールが供与されている。辺境の地で製造したとは思えない高性能機であり、一年戦争後に工廠を作るところから始めたとは考え難い。サイド3や月面都市とは別系統で、MSの研究・開発が進められていたようだ。
MSのような複雑な製品では、特に、個々の部品の品質が重要になる。
単純化したケースで考えよう。個々の部品の段階で、品質基準を満たしている良品の割合が99.9%だとする。10点を組み合わせた製品で、良品のみが使用されている確率は、99.045%(99.9%の10乗)になる。部品点数が増えるに従い、良品だけで製造される確率は下がり、千個の部品を用いた場合では4割を下回り、1万個の場合では、ほぼ0になる。
現場レベルでの改善や検品の強化で、良品の割合を99.999%まで高めても、部品数が1万点に上ると、良品の組み合わせだけで製造される確率は約90%にとどまる。確実な作動が求められる兵器としては、この水準でも頼りない。極め高い歩留まりが必要だ。
MSの動力源は核融合炉であり、ビーム兵器やミサイルも搭載している。ビーム兵器を無効化するIフィールドの誤作動も甚大な被害を生じかねない(電磁パルスは発生しないのだろうか?)。
地球上とは違い、宇宙では空気の確保に電力が欠かせない。万が一、事故が広域停電に波及した場合は、死に直結しかねない。工廠の立地も電力システムも、設計段階からリスク管理が徹底していたと考えられる。
ネオ・ジオンのMSは、ジオン軍の戦略思想の流れをくみ、エース機・カスタマイズ機のバリエーションに富んでいる。寡兵であるため、個人の能力に頼る側面はジオン軍よりもさらに強くなる。
その一方で、ガザCなどの量産機は火力や機動性よりも生産性を重視したように見える。作業用MSとのパーツ共通化などでコスト低減を図った結果だろうか、外見の格好良さを求めない割り切ったデザインとなっている。MSの性能を引き出せるパイロットとそれ以外のパイロットで、極端に待遇が違う。能力主義の傾向が強かったのだろう。
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