ネオ・ジオンの戦争は、ザビ家の復興を賭けた領土拡大戦争という側面を持つ。辺境のアステロイドベルトを脱出して、かつてジオン公国があったサイド3を手に入れ、あわよくば地球圏の覇権を握ろうという野心に満ちた戦いである。
立身出世・栄誉栄達が期待できるからだろうか。「機動戦士ガンダムZZ」のネオ・ジオンの兵士は妙にテンションが高い。極端な男余りの世界から抜け出せる喜びもあったのだろう。野心を秘め、優れた才能を持ち、ハマーンからも高く評価されていたグレミー・トトも、序盤は敵軍の女性兵士であるルー・ルカに執心して不手際が目立った。
ネオ・ジオンの軍人は自軍の勢いと自らの権限拡大に酔いしれていた節もある。スペースコロニーの支配層にワイロとして金塊を贈り、正規の手続きを飛び越えて、軍を動かせる。段階を踏んで権力行使の範囲が広がるのではなく、地球圏に戻るや、あっという間に権限が拡大する。このような状況でテンションが上がらないという方が、少数派であろう。
金塊を大盤振る舞いできた背景には、資源衛星から金を採掘できたことが主因ではあるが、アステロイドベルトにいる間は貿易が限られていたことも影響していると考えられる。アクシズ内での金価格が地球圏と比べて安くても、たかだかサイド3との密貿易程度では一物一価に収れんしなかったのだろう。そもそも、金が電子部品の材料になることを考えると、金の輸出が規制されていた可能性もある。
略奪ではなく購入、ムチだけではなくアメがなければ、抵抗を招くだけになる。ネオ・ジオンの異常な侵攻速度には、温存していた金を一気に放出して、政治家工作や地球圏での物資確保に利用できたことが寄与しているのだろう。
一方で、勢力圏の拡大と部下の権限拡大に、ネオ・ジオンの組織作りが追い付かなかったようだ。
組織・業容の拡大にガバナンスが追い付かないことは、実際の企業にも見られる。マシュマー・セロの回想(あたかも“ハマーン様語録”のようである)において、ハマーンが部下の挙動について、具体的な方針を示していたことがうかがわれる。各部隊の司令官はハマーンの代理(エージェント)であり、ハマーンの意に沿った行動が求められる。時に逸脱や不徹底もありうるので、監視役としてキャラ・スーンなどを派遣することもあった。
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