土肥: 昆虫を使った料理をつくろう――。となって、次にどのようなことをしたのでしょうか?
松居: 昆虫食に興味をもっていた西本と出会って、自分たちは何をつくることができるのかを考えました。ミルワームを使えばおいしい料理ができるのではないかと思って、クッキーをつくってみたんですよね。
土肥: で、味は?
西本: オーブンから取り出してみると、丸くなっていたので「あれ、ひょっとしたら成功したかも?」と思ったのですが、スプーンですくってみるとバラバラに。ミルワームは脂分が多いので、くっつけることが難しい。
口に入れたものの、昆虫の香りが残っていて、ものすごく臭かったんですよ。何度も何度も試してみたものの、うまくいきませんでした。脂分と水分を抜くために乾燥させるなど、さまざまな方法を試したのですが、ミルワームの殻はものすごくかたいので、どうしても脂分や水分を取り除くことができませんでした。
松居: 養殖魚のエサとして、ハエやアブなども研究してきたので、人間用にもどうかと思って実験を重ねたのですが、これもうかくいかずでして。そんなときに、コオロギに着目しました。
土肥: どのように調理したのでしょうか?
西本: ミルワームのときと同じように、クッキーをつくりました。オーブンから取り出して食べてみたところ、味はまずまず。ただ、粘着性が弱いので、ちょっと食べるとボロボロと崩れてしまう。運動をしている人に食べてもらいたいので、これではダメ。体を動かす前に食べてボロボロ崩れてはいけないので、粘着性が強くなるように何度も試作品をつくりました。
本やネット上に掲載されているレシピを参考にして、「これはどうかな」「あれはどうかな」といった感じで、何度も試作品をつくったものの、失敗の繰り返し。国内だけでなく、海外のレシピなども参考にして、「ああでもない。こうでもない」と言いながら、失敗を繰り返していました。アスリートに試食してもらっても、「苦い」「くさい」「土の香りがする」などと言われ、昆虫の臭さをどうすれば消すことができるのか、この作業を繰り返していました。
昆虫の臭さを取り除く作業とともに、1本のプロテインバーにコオロギをどのくらい入れればいいのかにも悩みました。「コオロギが入ったバー」なので、できるだけ量を増やしたい。でも増やすと、コストがかかってしまう。と同時に、臭みが増してしまう。臭みが出ると、どうしても不快感を示す人が多いので、臭みと量のバランスをどうすればいいのかにも苦労しました。
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