コオロギが50匹入った昆虫食は、どのようにして生まれたのか水曜インタビュー劇場(臭み公演)(5/6 ページ)

» 2019年03月27日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

正直に言うと、「まだまだ」

土肥: 国内の製造にこだわる理由は何でしょうか? 海外でつくったほうが安くできそうなのに。

松居: いえ、価格はそれほど変わりません。いや、日本でつくるほうが安くつくかもしれません。タイから加工品を輸入すると、輸送コストや関税などがかかってしまう。一方、国内の工場は自動化が進んでいて、効率よくつくることができるんですよね。

 あと、営業先を回っていて、「国内でつくっているのであれば、ウチでも販売したいなあ」といった声をたくさんいただきました。国内志向はかなり強いなあという印象を受けたので、やはり国内で製造拠点をもちたいと思っています。

ファーム内の様子。熱を内部に反射させるため、アルミで全体を覆っている

土肥: なるほど。ところで、「コオロギが入った商品っておいしいの?」と聞かれませんか?

西本: よく聞かれます。正直に言うと、「まだまだ」。さらにおいしくするために、さまざまなことに取り組んでいかなければいけません。具体的にどんなことをするのか。コオロギの味は、エサによって大きく左右されるんですよね。どういったタイミングでエサをやればいいのか、どんなエサをやればいいのか、どのくらいの光がいいのか、どのくらいのストレスを与えればいいのかなど。

 エサだけではありません。どのような環境で成長させればいいのか、どのように加工すればいいのか、カカオの量はどのくらいにすればいいのか。このほかにも、さまざまなことを研究しなければいけません。

土肥: 正直に言うと、ワタシも「ものすごくおいしい」とは思えませんでした。「意外といけるな」といった感じなんですよね。コオロギが入ったモノなので、虫の臭いがするんだろうなあ、土の香りもするんだろうなあ、といったことを心配していました。あまり期待していなかったわけですが、実際に食べてみるとそれほどでもなかったので、「意外」という言葉が出てきたのかもしれません(失礼)。

西本: ドイさんのように「意外と……」という声が多いんです。「ものすごくおいしい」という声はほとんどないので、昆虫独自の評価軸をつくることができればなあと思っています。どういうことかというと、牛肉や豚肉の味に近づけたいと思っても、それは難しい。既存のおいしい食材と比べるのではなくて、「昆虫の味は、これくらいおいしい」といった軸をつくることができればなあと。

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