インタビュー
» 2019年04月04日 07時35分 公開

文化庁のお墨付き:令和の「令」、正しい書き方とは? 書道界「字体の第一人者」に真相を書いてもらった (1/2)

新元号「令和」の「令」の字は、印刷物や手書きなどによって字形がさまざまだ。どうしてこのようなことが起こるのか。書道界の「字体の第一人者」に実際に書いてもらい解説してもらった。

[今野大一,ITmedia]

 1日に発表された新元号「令和」。「令」の字は、印刷物や手書きなどによって字形がさまざまだ。印刷物によく使われる明朝体は3画目が横棒、5画目が縦棒で、菅義偉官房長官が会見で掲げた書も明朝体を意識して書かれたものだ。一方、一般的に手書きで使われる楷書体では、ともに斜めの点のように書くことが多い。どうしてこのようなことが起こるのか。

 先月、難病と生きる「孤高の書道家」という記事で紹介し、銀座幸伸ギャラリー(東京都中央区)で個展を開催中の財前謙さんに、実際に令和という文字を書いてもらいながら真相を聞いた。

phot 財前謙(ざいぜん けん) 1963年、大分県生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、都内の吉祥女子中学・高等学校などで国語の教員を務める。現在は早稲田大学教育・総合科学学術院講師、映画やNHKスペシャルのロゴなど実作も手掛けた。第一回「墨」評論賞大賞受賞。著書『新常用漢字196 ホントの書きかた』(芸術新聞社)『字体のはなし 超「漢字論」』(明治書院)『手書きのための漢字字典』(明治書院)などで白川静漢字教育賞『特別賞』を受賞。その他の著書に『日本の金石文』(芸術新聞社)などの評論もある

「昭和」「平成」よりも書きやすい

phot 菅義偉官房長官が会見で掲げた『令和』は明朝体に近い書体だった(Wikipediaより)

 「『令和』はとてもいい文字だと思います。音も字の姿も美しい。そして書きやすい文字です。バランスもとりやすいですね。しかしそれを敢えて(会見で掲げられた)明朝体で書かなければいけないと思ってしまったら、かえってこの文字の良さが半減するかもしれないですね。手で文字を書くときは、自分が書きやすい字体で気軽に書けばいいのです。

 『和』の方は昭和の時代から慣れ親しんできた字ですね。私は『平成』や『昭和』よりも『令和』はずっと書きやすい文字だと思います。1カ月も経てばさらに多くの人に親しまれるのではないでしょうか」

 早稲田大学で書道の授業を担当している書道家の財前謙さんはこう語る。明朝体と、手書きの楷書とで書き方の違いはあるが、大切なのは、いずれの書き方も「間違いではない」ということだ。

 「文字は、伝達することが第一義ですから、まず「令」という字だと理解できることが大切です」

 ただし、官房長官会見の映像を見た瞬間には、「伝統的な『手書き』の書き方から考えると、多少の違和感はあった」という。官邸に掲げられた新元号の文字を書いたのは内閣府の「辞令専門職」で、書家の茂住修身さんだと報じられている。財前さんによれば「政令や常用漢字表に従っての字体を考慮されたのではないか」という。

 書きやすさからすると、〈令〉の第3画と第5画はともに〈丶〉で書く習慣が中国の唐時代から一般的になって現在に至っている。それを第3画を〈一〉、第5画を〈I〉で書くのは後漢時代に使われていた隷書体(れいしょたい)の名残(なご)りだそうだ。会見で掲げられていた書体も、隷書のデザイン性を多分に取り入れた結果の書体なのだという。また、第4画の最終部分を跳ね上げるような書き方は不要とも指摘した。

phot 第3画を〈一〉、第5画を〈I〉と書く後漢時代の隷書体
phot 南北朝時代から隋時代への移行期の書体
phot 手書きで浸透している楷書体
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